コロンビアを撃破し、歓喜に湧く日本のイレブン。その隣で、本田圭佑は一人冷静に振る舞った。
3度目のW杯。初戦は自身はじめてのベンチスタートとなった。2010年南アフリカW杯では、カメルーン相手に値千金の決勝弾を挙げ、一躍日本のエースに。チームの大黒柱として迎えた2014年ブラジルW杯は、初戦のコートジボワール戦で前半に左足でゴールネットを揺らしたものの、後半にチームは2失点を喫し逆転負け。いずれにしても本田は日本が迎える緊張の第一戦で必ず先発し、誰よりも結果を出してきた。
「大舞台で“一発”を決められる自分になろうとしている」
あれは、ブラジルW杯から数ヶ月が経った頃のことだった。
当時、イタリアの名門・ミランに所属していた本田を取材するため、現地を訪れた。
取材ノートを見返していると、ある言葉が記されている。
「ここからの自分は、大舞台で“一発”を決められる自分になろうとしている。(ブラジル)W杯のギリシャ戦で、あれだけ相手を攻め込みながらも、自分を含めて日本には誰も試合を決められる、ゴールに繋がるプレーをする選手がいなかった。サッカーの勝負を分けるのは、結局は最後の一発を決められるかどうか。その局面で、勝てるかどうかですから」
過去2大会のW杯初戦で、ゴールを挙げている。それだけでも十分“一発”を持っている。ただ、本田は国民の大きな期待を背に戦ったブラジルW杯で、自分のゴールやプレーが勝利につながらなかったことに納得できていなかった。
ロシアW杯への準備を進める中、大会が差し迫ってくるに連れて本田のチーム内での立ち位置が微妙に変化していく。先発メンバーから、主力外へ。テストマッチの出来などを元に、西野朗監督が戦力状況を整備した結果だった。
本田にチャンスがあるなら、途中出場しかない。ならば、逆に“一発”を決める勝負強さを発揮すべき時も、このタイミングしかない。
かつて本田がミラノで自ら語った話を、逆にコロンビア戦前に彼に振ってみた。
――以前、ブラジルW杯を踏まえて、90分間でどうプレーするかも大事だけど、ここぞのところで出てきて“一発”を決められるかどうかが大事になってくるという考えを話していた。
「そのとおりだと思います。究極のサッカーは、やっぱり個なので。誰かの一振りが、そのボールがゴールに入るかどうかだけ。戦術で、ゴールは決められない。その意見は、今も何も一切変わっていない。初めてW杯を経験した時から変わっていない」