ファーストプレーから狙っていた本田
コロンビア戦、本田に出番がやってきたのは70分。試合終了まで、残された時間は少ない。香川真司のPKで先制したものの、日本は強豪相手に11対10の数的優位になりながらも試合を優勢に進められず、前半終了間際には同点弾も喫していた。
ファーストプレーから、本田は“一発”狙いだった。
71分、右サイドから中央に切り込み左足を強振。これは足にミートできず不発となった。さらに本田が起点となり右サイドを崩すと、最後は酒井宏樹がゴール前に侵入しシュート。絶好機だったが惜しくもDFにあたり、日本のコーナーキックとなった。
左サイド角のポイントには、本田が立った。ここまでのテストマッチでは、セットプレーのキックもあまり当たりは良くない。一方、実は2018年、所属先のパチューカ(メキシコ)ではリスタートからのアシストを量産してきていた。今年に入り挙げたアシスト数『7』のうち、実に半数以上の『4』がフリーキック、コーナーキックからだったのである。
一度、二度、味方が待つゴール前に顔を上げ、足下に視線を落とす。左足で蹴り上げられたボールは鋭く回転がかかり、最後は大迫が体を捻りながらヘディングでゴールネットに沈めてみせた。
“一発”――。それはゴールではなかった。しかし、紛れもなく日本の貴重な得点は大迫の頭、そして本田の左足が呼び込んだものだった。
喜ぶ大迫と、あっさりした対応をする本田
試合後の取材エリア。先に姿を現した大迫が、喜びを噛み締めながらこう語った。
「圭佑さんは、本当に練習からすごくいいボールを蹴ってくれていて、あの形での得点が多かった。良い質のボールが、僕の頭のところに落ちてきてくれた。本当に感謝しかない」
連日、非公開練習を続けていた西野ジャパン。セットプレーのトレーニングも当然われわれをシャットアウトして行われた。そこで本田は、しっかり自分の左足に本番仕様に磨きをかけていた。
多くの選手から遅れて、本田が取材エリアにやってきた。試合直後のピッチ上での表情と同じく、冷静そのもの。大きな1勝ではあるが、それに動じていない様がうかがえた。
ある記者が問いかける。
――途中から出てきて一仕事するのは、本田くんらしい。
「いやいや、そんなに大したことはなくて。どっちかと言ったら、1本目のシュートをダフった方が悔しくて。あそこのためにやってきている部分があるので。今日はあまり良くなかった」
アシストにも、あっさりした対応。確かに本人としても、投入直後のシュートチャンスを是が非でも決めたかったのはわかる。
ただ、あのアシストには今季本田がここまで見せてきたキックの精度とアジャスト、そして大迫との練習の成果が隠されている。
本田が取材エリアを過ぎ去る最後のところで、今度は直接投げかけて彼の真意を確かめていった。