『警視庁科学捜査官』から生まれた

石井 この『警視庁科学捜査官』の本が出るとき、担当編集者から「推薦コメントを書いてくれる作家の方はいませんか」と相談されて。これは警察小説の名手である長岡弘樹さんがうってつけじゃないかとゲラをお送りしたらすぐ「やります」とお返事がありました。「こんなに面白い警察の資料を初めて読みました」と。

K 良かったですね。長岡さんは常に執筆のための資料を求めているそうですから。

石井 そのときに、こういう科学捜査ネタで書いてくださいよ、とお願いしたんです。長岡さんも「これは書けそうですね」とおっしゃって、2021年の「オール讀物」12月号にいただいたのが百目鬼巴シリーズ第一弾の「裏庭のある交番」です。

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D 蓋を開けてみると、がっつり科学捜査って感じではないですけど、どこかケミカルな感じはありますよね。

K トイレの洗剤と入浴剤を使った硫化水素中毒が出てきたりして。

石井 今後、どのような形の話も作れるように、科学捜査の知識もある、謎のスーパー相談員として百目鬼巴というキャラクターができたんでしょうね。この百目鬼巴っていうキャラクター、どうですか?

D チャーミングで、愛すべきおばちゃんって感じですね。知識も洞察力もあるんだけど、それをひけらかしたり、押しつけがましい感じでもない。4話めの「冬の刻印」で、骨折した同僚に付き添って整形外科に行くシーンがあるんですけど、そのあたりなんかとても人間味があります。

K 好奇心旺盛で、年齢にしては若い感じもある人です。でも、やっぱりちょっと「変」じゃないですか? 一般的な公務員のイメージとは違うところがある。四角四面ではなく、柔軟な考え方を持っていて、そこがまた魅力的です。