ヒットのカギは「ヨーロッパの目」

 ラングラー以外にも、ジープには「レネゲード」というヒット車種がある。こちらはジープでもっともコンパクトな車種であり、ホンダのヴェゼルなどと同程度のサイズ感なので、日本でも取り回しに困る場面は少ないはずだ。主力グレードの排気量は1.5リッターを下回り、自動車税も安く済む。

ジープ レネゲード 画像は公式サイトより

「日本でも苦労せず乗れるアメ車」というと意外に思えるが、実はこのレネゲード、イタリアのフィアットと共同開発されたモデルであり、ある意味でアメ車メーカーの命運を象徴する存在ともいえる。

 当時ジープブランドを統括していたのは、かつてアメリカの「ビッグスリー」とも呼ばれたクライスラーだった。しかしリーマンショックを引き金とする経営難により、フィアットへの統合が進み、2014年には完全子会社となる。

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 2015年にリリースされたレネゲードは、この統合による「グローバルブランド」となったジープが、世界での販売を見据えてリリースしたモデルだった。

 その結果、ジープのエッセンスは残しつつも、デザインは親しみやすく小洒落た雰囲気に。反面、アメ車的な無骨さは控えめになった。さらにオフロード走行を前提としない前輪駆動のモデルを設定したことで、ジープブランドの裾野を広げる役割を果たしている。

日本で売るには「脱アメ車」が必須?

 過去に遡ってみると、上のレネゲードと同様、「アメ車らしさを抑えることで日本でヒットしたモデル」がある。SUVの草分け的存在であるジープの2代目チェロキーだ。

 1984年に登場したこのモデルは、先代に比べて大幅にコンパクトになったボディを特徴とする。本格的なオフロード性能を備えながら、全幅は1.7m台、全長は約4.3mと、現在のシエンタやフリード程度のサイズ感に収められていたのだ。

 小型化の背景にあったのが、当時チェロキーの製造元であったAMC(アメリカン・モーターズ社)が、経営難からルノーの資本を受け入れたことである。ルノー側の意向が2代目チェロキーの開発に強く反映された結果、欧州的なルックスとコンパクトなボディが実現した。

 先のレネゲードもそうだが、アメ車にとってはある種の外圧が「脱アメ車化」を促し、日本市場での成功を導いた例といえる。

 なお日本への輸出自体は1985年から行われていたが、販売が本格化したのは1993年以降のこと。決定的だったのが、右ハンドル版の設定と、300万円を切るグレードの導入である。

 とくに価格面では、それまで450万円を超えていた車種が円高の影響もあり300万円以内に収まったことで、当時国内で流行していたパジェロなどの国産クロカン車種とも競合することができた。