「こっち来るな障がい者」とイジメてくる同級生も…

 特別支援学級に通い始めた。

 登下校の時間をズラされて、部活にも入れてもらえなかった。根性でずっと続けてきた柔道も、取り上げられてしまった。

 俺が通うことになったのは、「7組」の教室だった。“普通”の子たちのクラスは5組までしかなくて、そこから6組を飛ばして「7組」。わざわざひとつ飛ばす意味って、なんなんだろうな。

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“みんなと違うクラス”に通うヤツが、どんな目で見られるかは分かるよね? たぶんどこの学校も、そんなに変わらないはずだ。

「お前、“養護”なの?」

「こっち来るな障がい者」

「汚いんだよ」

 それまで仲良くしてたヤツらも離れていって、散々バカにされた。そりゃそうだ。同じクラスにいた生徒が急に特別支援学級に通い始めたら、イジメられるに決まってる。

 同じような経験をした人は、分かってもらえると思う。

 こういう時、意外とムカついたり、仕返しをしてやろうって思うことはないんだ。代わりにあるのは、ただただ「恥ずかしい」って感情だけだった。

 ただひとり、柔道で仲良くなったツカダくんだけは俺に優しくしてくれた。ある時、「俺、障害者学級に入るかもしれない」って相談したらツカダくんは、「いいんじゃない? 関係ないよ」って言ってくれた。

 これがどれだけ嬉しかったか。今は連絡先は分からないけど、もう一度会えるならきちんと「ありがとう」って伝えたい。あの時できなかったお泊まり会も、今度こそやりたいな。

 家に帰っても、学校の話はまったくしなくなった。できるだけ明るく振る舞ってたつもりだけど、特に母さんは気づいてただろうな。どうしても表情は暗くなるし、友だちと遊びに行く時間もなくなるわけだからね。

 これは後で聞いた話だけど、母さんは一度、俺が毎日通る通学路をひとりで歩いてみたことがあるんだって。息子が毎朝味わう辛い気持ちを、せめて自分も味わっておこうと思ったらしい。

「自分は何てことをしてしまったんだろう」……母さんはその時、そう思ったって言ってた。

 父さんは、「お前の育て方が悪いんだ」って母さんを責めて、よく喧嘩になっていた。

 基本的には優しいんだけど、ちょっと亭主関白なところもある人なんだ。自分の仕事も大変な時期だったみたいで、だからカリカリしてた部分もあるんだと思う。

 俺のために友だちと喧嘩してくれて、それ以来気まずくなっていた真ん中の兄ちゃんも、「なんでハルキを特別学級に入れたんだ」って母さんを責めてた。