NHK大河ドラマ「べらぼう」をどう評価すべきか。歴史評論家の香原斗志さんは「性に関する表現を避けず正面から取り上げた。この時代の描写として真っ当であり、NHKがこれを許したことには大きな価値がある」という――。
NHK大河に流れた異例のテロップ
日曜夜8時から放送されるNHK大河ドラマとしては異例の、「番組の一部に性に関する表現があります」というテロップが、番組冒頭で表示された。「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」の第18回「歌麿よ、見徳は一炊夢」(5月11日放送)。実際、「性に関する表現」は「番組の一部」どころか、全体にまぶされていた。
まず、蔦重こと蔦屋重三郎(横浜流星)が、かつての唐丸でいまは捨吉と呼ばれている喜多川歌麿(染谷将太)を訪ねると、尼の姿の「馴染み」(岩井志麻子)が現れた。捨吉は男娼なのだ。しかし、蔦重は帰りがけ、男に「あんた、捨吉の昔の色かい?」と尋ねられた。男は「あいつはどっちも客とるからよ」という。つまり、捨吉は男女ともに相手にする男娼というわけだ。
蔦重が耕書堂に戻ると、今度は駿河屋の女将ふじ(飯島直子)が「まあさんの筆が止まっちまったんだってさ」という。まあさんとは、蔦重が吉原に連泊させ青本を書かせている朋誠堂喜三二(ほうせいどう きさんじ)(尾美としのり)のこと。蔦重は本が書けなくなったのかと思うが、義兄の治郎兵衛(中村蒼)が「そっちの筆じゃないよ。腎虚(じんきょ)になっちまったんだよ」と説明した。腎虚とは、要は、性行為のしすぎによるED(勃起障害)である。
続いて、蔦重が松葉屋の女将いね(水野美紀)に尋ねた言葉で、なぜこうした性描写が織り込まれたのかがわかった。
喜多川歌麿の秘密の過去
蔦重が「色ってほんと疲れるもんですよね、男にしろ女にしろ」というと、いねは「そりゃそうさ。だから男は腎虚になるし、女は早死にする」と返した。蔦重が「体を売る暮らしが好きだった人はいますかね」と聞き返すと、いねは「たまにいるのは、罰を受けたい子だね」と返答し、続けた。