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若い歌舞伎役者が陰間になることが多かったのを除けば、陰間は江戸の下層社会の実相を表している。
しかも、「べらぼう」の第18回では、朋誠堂喜三二の「腎虚」騒動を軸に、さらなる下層社会の夜鷹や陰間に話をつなげ、さらに将軍も同じ欲求をいだく同じ人間であることも想起させた。考え抜かれた脚本だと感心させられる。
これまでのNHK大河ドラマも、時代の社会の実相が描かれないわけではなかった。しかし、一昨年の「どうする家康」にせよ、昨年の「光る君へ」にせよ、権力者とその周辺が舞台なので、庶民の社会を深掘りするには限界があった。一方、「べらぼう」は主人公が町人で、舞台は吉原。「性に関する表現」を避ければ、吉原の実態も、その周辺を含めた社会の実相も、蔦重の仕事も、表面をなぞるだけで終わってしまうだろう。
日曜のゴールデンタイムに「みなさまのNHK」が「性に関する表現」を放送すれば、波紋を生むのかもしれないが、歴史ドラマの描写として真っ当であり、NHKがこれを許したことには価値があると強調しておきたい。
香原 斗志(かはら・とし)
歴史評論家、音楽評論家
神奈川県出身。早稲田大学教育学部社会科地理歴史専修卒業。日本中世史、近世史が中心だが守備範囲は広い。著書に『お城の値打ち』(新潮新書)、 『カラー版 東京で見つける江戸』(平凡社新書)。ヨーロッパの音楽、美術、建築にも精通し、オペラをはじめとするクラシック音楽の評論活動も行っている。関連する著書に『イタリア・オペラを疑え!』、『魅惑のオペラ歌手50 歌声のカタログ』(ともにアルテスパブリッシング)など。
歴史評論家、音楽評論家
神奈川県出身。早稲田大学教育学部社会科地理歴史専修卒業。日本中世史、近世史が中心だが守備範囲は広い。著書に『お城の値打ち』(新潮新書)、 『カラー版 東京で見つける江戸』(平凡社新書)。ヨーロッパの音楽、美術、建築にも精通し、オペラをはじめとするクラシック音楽の評論活動も行っている。関連する著書に『イタリア・オペラを疑え!』、『魅惑のオペラ歌手50 歌声のカタログ』(ともにアルテスパブリッシング)など。
