「横領犯」を雇い続ける店も
従業員による横領は、被害総額が数百万円単位にのぼるケースも珍しくはない。本来は店の利益だったと思うとやりきれないだろう。もちろん、経営者としてはそんな従業員は「即刻クビ」にして警察に突き出したいが、さりとて盗んだ金は犯人の手元には残っておらず、返ってくる可能性は残念ながら低い。
そのため、失った金を取り戻すために罪を犯した従業員を雇用し続け、給料から天引きしながら返済させる経営者もいる。700万円を横領された、都内の飲食店を経営する40代の人物は、既に金を使い果たし返済能力のない30代の犯人を3年にわたり雇い続け、毎月の給料から天引きし返済させた。
発覚した当初、この経営者は「お金に困っているなら、相談してほしかった」と悲しげに話していた。その後、犯人が横領した金をギャンブルや風俗に使い込んだことを知り、落胆したという。
先日、ついにその返済が終了。経営者は「来月から給料を天引きせず、働いてくれた分の給料を渡せる」と晴れやかな顔をしていた。犯人も改心し、今では真面目に働いており、今後もその店で働き続けるという。
とはいえ、葛藤もあったという。一度は横領に手を染めた従業員が働いているのは、あまり気持ちのよい状況ではない。「また横領されるのではないか」と不安は付きまとうし、他の従業員のモチベーションにも影響しかねず、救いようがない。
「横領しやすい店」の特徴
そもそも、なぜ横領が起こるのか。
当然ながら横領を行う当人の倫理観の欠如によるものが大きいが「横領をしやすい環境」「しにくい環境」というものも存在する。多くは、複数店舗を経営するようになり、経営者が現場にいない場合に起きがちだ。規模が拡大し目の届かない範囲が増える分、管理体制を整える必要がある。
経営者が派手な生活ぶりを見せている場合も気を付けたい。
ハイブランドの服に身を包み、住居はタワマン高層階。高級車を乗り回す――といった、誰が見ても「お金を持っている」という姿は横領を誘発する。
実際、資金を持ち逃げされたある経営者はSNSでたびたび高級レストランでの食事や(飲食業なので同業の店を食べ歩くことは仕事でもあるのだが)、海外旅行の様子をアップしていた。これらも無関係ではないのだろう。
