最新の主演作である『子宮恋愛』も、放送前から物議をかもした。しかし、本編には松井の熱演が目を引く回もある。中でも5月15日に放映された第6話は、モラハラ気質の夫(沢村玲)に感情を抑圧されてきた主人公が、ついに離婚を願い出る見せ場だった。
あるシーンで松井の演じる主人公に離婚届を差し出されて逆上した夫は、彼女を床に押し倒して力ずくで押しとどめようとする。松井は苦悶の表情で目に涙を浮かべて激しく抵抗。強い意思で夫を振り払ってやっとの思いで家を飛び出す――という、これまでの展開で最も切迫したといえるシーンだった。
ボロボロで街に出た松井を、想い人である同僚(大貫勇輔)が見つけ、2人は感情のあふれるまま初めて一夜をともにする。夫の言いなりだった女性が感情を取り戻し、不倫の恋に没頭していく姿を全身全霊で表現していた。
抜群のスタイルでも「素朴」なキャラをしっかり演じ切る力がある
松井のキャリアを振り返ると、センセーショナルな話題に視線が集まりがちだが、俳優としての彼女は邪なところやずるさがない実直な役柄がさまになる人でもある。
2024年に人気を博したホームドラマ『西園寺さんは家事をしない』(TBS系)では、松村北斗演じるシングルファーザーの病死した妻の役として、大切に思われ続ける清廉な女性を好演。病で亡くなった設定で、回想シーンのみの出演ではあったものの、衰弱していく中でも松村を思ういじらしい姿が魅力的であった。
さらに振り返ると、初主演の映画『癒しのこころみ~自分を好きになる方法~』(2020年)で演じた、同僚や常連客に見守られながら成長する不器用な新米セラピスト役もよく似合っていた。
主人公はぶっきらぼうな父親と2人で古めの一軒家に暮らしながら、街の小さなリラクゼーション店で働いているというじつに地に足のついた設定。モデル出身で非凡なスタイルの持ち主でもある松井だが、意外とそんな役柄にもなじむ。いい意味で「素朴」なのだ。
