日本のアニメは手描きのアナログ感が魅力で、3DCGを駆使したデジタル表現は人の動きを描くことには不向きだと思われていた。だが、前クールの『メダリスト』のように、3DCGで人間の動きをうまく表現する作品も近年は増えており、本作の女性キャラクターのライブパフォーマンスの手足の動きや衣装や髪の毛の揺れの細かさを観ていると、ついにここまでできるようになったのかと驚かされる。

 また、お客さんを応援するためにユイナたちがお花屋さんで歌う場面では、悩みを抱えたお客さんの心象風景のビジュアルとユイナたちのライブパフォーマンスが交差するMV的な華やかな映像となっている。

ライブシーンは3DCGが駆使されかなりリッチ 公式Xより

 観ていて思い出すのは、『少女革命ウテナ』や『輪るピングドラム』の監督として知られる幾原邦彦が得意とするアヴァンギャルドな映像表現だが、そもそも幾原の映像自体が、彼が関わっていた『美少女戦士セーラームーン』シリーズで展開していたセーラー戦士の変身シーン(変身バンク)を洗練させていった結果生まれたものだったため、魔法少女の変身シーンをアイドルのライブパフォーマンスとして見せるという発想はある種の必然だったのかもしれない。

ADVERTISEMENT

 監督の山元隼一たち制作者の意図はわからないが、前衛的な映像表現と現代の少女たちの悩みに寄り添った物語を観ていると、幾原作品の映像表現とテーマを引き継いだ後継的な作品だと感じる。

ルッキズム、推し活、ヤングケアラー…若者の直面する問題が次々と

 もう1つの魅力は脚本とシリーズ構成を担当する吉田恵里香による巧みなストーリーテリング。劇中ではユイナたち魔女見習いがお客さんの願いを叶える姿が描かれるのだが、同時に魔女見習いの少女たちのエピソードが順番に展開されていき、彼女たちの内面と取り巻く社会を深く掘り下げていく。

主人公のユイナのポジティブさにはサイコ味さえ漂う 公式Xより

 作品世界の設定を説明する第1話が終わると、2~3話ではアズ、4~5話ではマイ、6~7話ではチョコと、2話で1人分のエピソードを描いている。今後は8~9話でキョウカ、10~最終話にかけてユイナの物語が描かれるのではないかと思うのだが、一人一人のエピソードがキレキレで、現代を生きる少女たちが直面する悩みを深く掘り下げる内容となっていた。