懐かしそうに語る。ママは事件現場となった30×号室の真下に住んでいた。このマンションの下水システムは、上階から末尾の数字が同じ部屋の下水と合流して下に流れて行くため、ママの部屋は松永らと同じ排水管を使っていた。そこで問題が起きていたそうだ。
下水が詰まった原因は
「ママの部屋のトイレが溢れよったんですよ。それで『お前んところはなにを流しよんのか』って、あの部屋に文句を言いに行ったことがあったんです。そんときは玄関に緒方が出てきて、すみませんって謝りよったね。後日、カップラーメンかなにかをごっそり持って、謝りに来たよ。で、それからは収まったんやけど、あの家の女の子が夜遅くにリュックを背負って、ペットボトルを持って出て、公園の公衆便所に流しに行きよったみたいやね」
ここで「ペットボトルを持って」との言葉が出てくるが、その中身は、被害者の遺体を解体して肉を茹で、ミキサーで細かくしたものであると予想される。ただし、ママの部屋のトイレが溢れた原因が、それらを流そうとしたためかどうかはわからない。というのも、松永らの部屋から続く排水管などはすべて押収されたが、被疑者の遺体の痕跡は、何ひとつ発見されていないのだ。
「ママの部屋の天井に穴を開けて、配管からなにから確認しよったし、1階の駐車場の床面も剥がして、排水を調べたりもしよったからね。それはもう、徹底的にやりよったよ」
マスターは二十数年前の話を、つい先日の出来事のように口にする。
だが、こうした事件にまつわる生の証言も、間もなく聞くことができなくなるのである。
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