なぜけんごさんは道尾秀介『いけない』を選んだのか?

 そして2024年の秋に、「イオン」を中心とした全国の大型ショッピングセンターに出店する大手書店チェーンの未来屋書店が、けんごさんにこう声をかけました。

「どんな作品でも自由に選んでいただいて構いません。一冊、店頭で一緒に大きく仕掛けてみませんか?」

 けんごさんはこの依頼を快諾。そして選んだのが、道尾秀介さんの『いけない』(文春文庫)でした。

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いけない

 直木賞作家の道尾さんは、読む章の順番で720通りのストーリーが味わえるミステリー『N』や、脱出ゲームのSCRAPと組んで作った犯罪捜査ゲーム「DETECTIVE X」など、小説の枠を超えたエンターテインメントで読者を驚かせつづけているミステリー作家です。本作『いけない』は、ある架空の町で起きた事件を扱う連作短編集の体裁をとりながら、各章の最後に挿し挟まれる1枚の写真を読み解くことで、もう一つの真相が明かされる、という前代未聞の仕掛けが話題の作品となっています。

「そもそも小説を読むのって、コミックやアニメ、ドラマや映画といった他のエンタメに比べてハードルが高いと思われがちなんです。なぜその小説を読まなければならないのか、という理由が明確にならないと、特に読書を普段からしていない人はなかなか手にとってくださらない。せっかくなので、〈小説なのに、文章を読むだけではない楽しみがあり、新しい体験ができる〉作品をご紹介したいなと思って、〈小説なのに、写真を見なければならない〉〈小説なのに、文字以外の謎解き要素がある〉道尾さんの作品を選びました」