「私は父が好きだったんです」「母が出産しました。僕の子どもです」――タブーとされる「家族間性交」当事者たちは何を思い、日々を過ごしているのか。『近親性交 ~語られざる家族の闇~』(阿部恭子著、小学館)より一部抜粋し、お届けする。なお、本文中の人物名はいずれも仮名。(全3回の1回目/2回目を読む3回目を読む

家族間の性交、当事者たちが語る衝撃の事実 ©takasu/イメージマート

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 医学部の学生の佐々木悠馬(22歳)は、最近、知り合った年上の看護師と交際していたのだが、交際相手宛に「呪ってやる」と書かれた手紙や五寸釘が刺された藁人形が送り付けられるなど、誰からか見当もつかない嫌がらせが続いていた。

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 悠馬が、弁護士を通じて探偵に調査を依頼すると、なんと、加害者は悠馬の母親だったことが判明した。

「示談交渉は弁護士に進めてもらっていますが、加害者になった母親のケアを阿部先生にお願いできないかと思いまして……。母も阿部先生に相談したいっていうので」

 悠馬は弁護士を介して相談に繋がっていた。私は悠馬から事情を聴くと、すぐに関西地方に暮らす悠馬の母・恵理子(42歳)を訪ねた。犯行態様の陰湿さから、恵理子にとても怖い印象を持っていたが、目の前に現れた恵理子は意外にも穏やかで、華奢で物腰の柔らかい少女のような女性だった。

「この度は本当に申し訳ございません。私ったら本当に恥ずかしいことをしてしまって……。あの子の人生、傷つけてしまったんじゃないかって、毎日、後悔してるんです……。でも、こんなこと、誰にも相談できなくて……」

 恵理子は泣きながらそう語った。交際相手の何が気に入らなかったのか。