「朝と夜と、1日2回。仕事がない日は1日中ベッドに……」

「相手の方のことは全く存じ上げません。お恥ずかしいのですが、誰であれ、悠馬をとられてしまうのが、怖くて仕方なかったんです……。どうか、助けて下さい……」

 悠馬は恵理子にとって、自慢のひとり息子だった。恵理子の夫も医師であり、恵理子は短大卒業後、すぐに夫と見合い結婚をし、20歳で悠馬を出産した。恵理子の実家では、女子に大学進学は許されず、20歳までには実家を離れなければならなかった。結婚は早ければ早いほど良いと考えていた恵理子にとって、6歳年上の医師との見合いは悪い話ではなかった。

「息子を医者にするのが僕の夢です。恵理子さんお願いします」

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 これが夫からのプロポーズの言葉だった。そしてふたりは入籍するや否や、早速、子作りをスタートさせた。

「朝と夜と、1日2回。仕事がない日は1日中、ベッドにいることもありました」

 恵理子は、情熱的な夫との生活に心身ともに満足していた。そして、1か月後に生理が遅れ、妊娠が判明した。夫は大喜びし、恵理子の身体に負担をかけないよう、早めに帰宅し、家事をしてくれていた。この頃の夫は、恵理子にとってこの上ない理想の夫だった。しかし、そうした甘い結婚生活は長くは続かなかった。