かつて同じ郵便局の同僚だった女子高生に、ストーカー行為を働いた43歳の元薬剤師の男。この事件では懲役6カ月執行猶予5年の有罪判決を言い渡された男は、女子高生に復讐を計画。彼女に劇薬をかけ、障害が残るほどの怪我を負わせる。この事件はどんな結末を迎えたのか? ノンフィクションライターの諸岡宏樹氏の著書『実録 性犯罪ファイル 猟奇事件編』(鉄人社)より一部抜粋してお届けする。なおプライバシー保護の観点から本稿の登場人物はすべて仮名である。(全2回の2回目/最初から読む)
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犯人と被害者はどこで出会ったのか?
美和さんとはアルバイト先の郵便局で知り合った。上田は別の部署で働いていたが、美和さんが休憩所で友人と話していると、必ず割り込んで入ってきた。
帰りのバス停でも待ち伏せし、自宅マンションを突き止められた。学校へ行く途中も付きまとい、たまりかねた美和さんは警察に相談。上田はストーカー規制法違反容疑で逮捕された。
「手紙を渡したかっただけだ。それが何でストーカー行為になるのか。何もムチャなことはしていない。心配のレベルが異常だ。アルバイト先が一緒だったから、バス停でかち合うのは当然のことだ。自分の気持ちを伝えたかっただけ。はっきり拒絶されれば、付きまとわなかった」
だが、この事件では懲役6カ月執行猶予5年の有罪判決を言い渡され、上田はこれに納得できず、最高裁まで争ったが棄却された。
冤罪のヒーローが一転、笑い者になってしまい、その原因を作った美和さんは許せる存在ではなかったのだ。警察は「お礼参りの可能性がある」と警戒し、上田の釈放後、月2回は美和さんに電話して、異常がないかどうか確認していたが、美和さんの親から「もう大丈夫です」と連絡があり、警察がケアをやめた10日後に事件が起こった。
「お前には被害者を狙う動機があるだろう!」
「事件当日の自宅マンションの防犯カメラを見てください。自分が外に出る様子が映っていますか?」
「防犯カメラに映らないように外に出る方法はあるじゃないか。そんなことは捜査員が実証済みだ」
「それを自分が知ってたって証拠はあるんですか?」
「防犯カメラに映ってなかったからといって、外に出なかったというアリバイにはならないぞ」
それでも上田は犯行を認めず、公判になっても見苦しく言い訳を重ねた。

