住宅会社が客室設計を手掛け、従来のイメージを刷新した
以前の寝台特急は客車が使われていた。機関車を付け替えれば、直流電化区間、交流電化区間、非電化区間も走行できるからだ。そもそも初期の電車はモーター音がうるさくて、寝台特急には不向きだったとも言える。
しかし、1967年に寝台特急用の581系電車が登場し、京阪神と九州を結ぶ列車に起用された。1968年には東北本線向けに583系電車が追加された。
どちらも日中は寝台を畳んで座席特急として運用できるもので「昼夜両用特急電車」として、高度成長期に輸送力を支えた。ただし、客室サービスの点では従来の客車の寝台車と変わりなく、B寝台もA寝台も通路を挟んだカーテン間仕切りだった。
285系電車「サンライズエクスプレス」はこうした旧来のサービスレベルを一新すべくデザインされた。客室の設計はミサワホームが手がけており、1編成7両のうち6両は個室寝台車である。
個室だけではない、発売すると「即完」する理由
現在サンライズ出雲とサンライズ瀬戸はたいへんな人気列車で、1カ月前のチケット発売日にはすぐ満席となってしまう。各旅行会社もサンライズを組み込んだツアーを販売している。カシオペアと同様に、休みに合わせて乗れる列車ではなく「チケットを取れたらその日は休む」という気持ちがないと乗れない。
これほど人気を博すのは「個室」という以外にも理由がある。例えば「寝台特急の有効時間帯」はその一つだ。
寝台特急の有効時間帯とは、他の交通モードと比べて優位な時間帯ということ。簡単に言うと、新幹線の最終列車や旅客機の最終便の後に発車して、新幹線の始発列車や旅客機の始発便より前に到着する。寝台特急で移動した方が時間を有効に使えるわけだ。
サンライズ瀬戸が、まさにこの例に当てはまる。サンライズ瀬戸は東京駅を21時50分に発車し、高松駅到着は7時27分だ。東京から新幹線で向かう場合、最終列車は20時21分発、航空機の最終便は20時15分発。サンライズ瀬戸の方が1時間以上も遅く出発できる。もちろん始発便でもサンライズ瀬戸より早く到着できない。
サンライズ出雲は東京駅を21時50分に発車し、出雲市到着は10時ちょうど。新幹線「のぞみ」と在来線特急「やくも」の乗り継ぎだと、最終列車は17時48分。航空機の最終便は18時15分だ。東京駅周辺で飲み会に参加しても間に合う。
ただし航空便の場合、7時5分の便に搭乗すると8時30分に着くからサンライズ出雲より早い。自宅で早起きするか、列車でゆっくり寝るかの選択だ。サンライズ出雲が有利なのは7時台に到着する備中高梁駅、新見駅へのアクセスと言える。