「握力」を測ってフレイル予防

 伊藤 各市町村では、後期高齢者向けの健康診断「長寿健診」を実施しています。75歳以上の方、あるいは65歳以上で後期高齢者医療制度に加入している方が対象の健診ですが、この中で僕が一番注目する項目は「握力」ですね。

握力の数値はフレイル予防に直結する(写真はイメージ) ©years/イメージマート

 山中 握力はここ数年で長寿健診の項目に加わったんですよね。

 伊藤 そうなんです。新しく加わったのにはやはり理由がある。健康診断で他の数値が良くても、握力はその推移も含めて、しっかり見ておきたい指標です。

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 というのも、握力は基本的ADLを保つために欠かせない、先述のフレイル予防に直結するからなんです。

 山中 フレイルは転倒や寝たきりのリスクを高めますからね。

 伊藤 診察していても実感しますよね。そのフレイルの最大の原因のひとつが筋力の低下です。中でも握力は、全身の筋力と相関があるとされています。手の力ですが、実は体幹を含めた筋肉量や筋力の指標になるんです。例えば70歳以上の女性の平均握力は20キロ前後と言われていますが、これが10キロを下回ってくると、かなり心配になります。男性だと20キロ以下が一つの目安になります。

 山中 それくらいの数値になってくると、患者さんも日常生活で物を持つことが、段々しんどくなってきますよね。

本記事の全文(約7000字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」に掲載されています(伊藤大介×山中光茂「元気な90歳 毎日のルーティン」)。

全文では、下記の9項目がお読みいただけます。
(1)たんぱく質を上手く摂る
(2)むやみに「水」を飲み過ぎない
(3)「握力」を測ってフレイル予防
(4)改善可能な「数値目標」を持つ
(5)顔色、目の力、声のトーン
(6)「歩くこと」を習慣にする
(7)できることは「極力自分で」
(8)「社会」に関心を持ち続ける
(9)合わない医師とは“離婚”する

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