「ヨット生活を続けるためにも…」日本に帰国して働き始めた理由

――カナダのヨット生活を経験して、おふたりの心境や価値観に変化はありましたか?

ルイ ひとつの到着点にたどり着いた時に、「この先どうしたらいいか分からない」不安を感じる自分がいたんです。海を制覇するといった目的は、捉えては消える虚しいものだなと。旅の目的とは、タイトルを獲得したり、自然を制したり、何かを達成することではないと気付きましたね。

コル どこで何をしていようと、「日々そのもの」が私たちの冒険であり、ふとした瞬間に感じるものの中にこそ、大切なことがあるんだなと思うようになりました。

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ヨットに出会って価値観が変化したというふたり

――その後、なぜ日本に帰国しようと思ったのでしょうか。

コル 当時乗っていたヨットは、大人2人が快適に暮らすにはすごく窮屈でした。ヨット生活を続けるためにも、一度態勢を立て直したほうが良いと思い、サンディエゴでヨットを手放して、一度日本に戻ることにしたんです。

――日本に戻ってからは、どのような生活を?

コル 今度は東京ではなく、京都に家を借りました。そこで私は茶道を学び、ルイは和食レストランで働き始めて。

ルイ ビザの取得には「日本人にしかできないこと」ができると有利なんですよ。また海外に渡ってヨットに乗りたいと思っていたので、その準備をするつもりでいました。

コロナ禍の2021年にヨット生活を再開→日本各地を巡る旅へ

――そして、2021年に再びヨット生活をスタートさせます。

ルイ その頃はちょうどコロナ禍で、僕もコルもなかなか仕事もできずにいた日が続いていて。そんな時に、状態の良い中古のヨットと出会ってしまったんです。「旅を再開するならまさに今じゃない?」となり、再び海に出る計画を練り始めました。

――それが、今まさに航海中の旅ですよね。

ルイ はい。まず大阪を出発して、四国の太平洋沿岸を航行し、奄美大島や沖縄を巡って、今は海外をセーリングしています。

 沖縄周辺の主要な停泊地には、国内外のセーラーが集まってきます。特に奄美大島には加計呂麻島との間に大島海峡があり、内海のように穏やかなので、外洋に出る前のメンテナンスを兼ねて、2年くらい滞在していました。

ふたりが乗っているヨット

――日本各地を巡るのは楽しそうですね。

コル 素敵な場所がたくさんありましたよ。例えば西表島のとある地域は、定期船が出ていないので、チャーター船を頼まないと行けないような場所です。ヨットならそんな場所にも自由に行けて、アンカー(錨)を下ろせば何日か滞在できる。

 お店も民家もほとんどないような場所で、自分たちで釣った魚を食べながら過ごす時間は、本当に贅沢でした。

ルイ 高知県の土佐清水も面白かったよね。ジョン万次郎の出身地ということもあってか、外から来る人に対してすごくオープンな土地柄で。閉鎖的な感じがまったくなくて、居心地が良かったです。

コル 日本国内にも、まだまだ面白い場所や文化風習があるんだと知れて、すごく楽しかったですね。