「『ヨット=お金持ちの乗り物』という先入観が強いけど…」

――2人のような生活に憧れる人は多いと思いますが、仕事を辞めてヨット生活をするというのは勇気のいる選択ですよね。不安はなかったのですか?

ルイ 僕たちはカナダでの経験がありましたし、中古艇の購入も2回目となると状態の見極めなどに役立ちました。不安があったとしたら、初めての日本沿岸での航行に、独自のルールや慣習があるということですね。「日本特有の制限がある中で、どのくらいのことができるのかな?」と思っていました。

コル 仕事に関しては、旅をしながら続けられるYouTubeでの動画配信などに切り替えたり、回航(オーナーからヨットを預かり目的地まで運ぶ)などをして賄っている感じです。

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ルイ 「ヨットで世界を旅している」というと、たまに「お金持ちなんですね」という方がいますが、それは「ヨット=お金持ちの乗り物」という先入観が強いのだと思います。陸の生活の方が、経済的にいろいろと大変なように感じますけどね。

ヨットで自給自足生活を始めて5年目を迎えた(写真=本人提供)

「普通の日本人ならなかなかこの選択をしない」なぜ若いうちから旅に出る決心をしたのか?

――それでも、「安定した収入がないのは不安」「だから旅に出るのは老後でもいいんじゃないか」と考える人は多いですよね。そんな中、2人はなぜ若いうちから旅に出る決心ができたのでしょうか。

ルイ 日本では、定年まで働いてしっかり貯金をしてから好きなことをする、という考えが一般的だと思います。だから、普通の日本人ならなかなかこの選択をしないし、ヨット生活を始めるとしても60歳をすぎてから、という人が多いんです。

 でも、体力的に続けられず、購入したヨットを手放す人もすごく多い。ヨットで旅を続けたい僕たちにとっても、健康であることはとても大事です。やりたいと思った事をすぐに行動に移してしまうという僕の性格もありますが、人生で今が一番若くて体力があるのなら、今旅立つのが最良だと感じたのだと思います。

コル 外洋に出ると、長時間のセーリングで雨風にさらされる場面もあるし、常に初めての海域、初めての係留地という状況は、かなり神経を使うんですね。そこには体力とともに、精神力が必要です。

 だからヨットの旅では、経済面よりも、「何に向けてだったら集中できるか? 熱くなれるか?」ということに重きを置いているのかもしれません。

ルイ 便利で快適な生活を送るためには、必要なものはたくさんあるかもしれません。でも、本当にしたいことだけを突き詰めたら、そのために必要なものって実はあまり多くないと思うんですよね。

 お金や仕事はなくなったらなくなったで、現地で働くとか、回航の仕事をするとかすれば、なんとかなります。だから僕たちはいろんなものを手放してきたし、手放すことに不安がないのかもしれません。

写真提供=「うみと船」

次の記事に続く 「電気にも食料にも困らない」「“海賊”がいる場所も」海の上で“自給自足”しながらヨットで旅する夫婦が明かす、ヨット生活の知られざる実態

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