――実際に雑誌が発売されてみて、反響はどうでしたか?
吉野 誹謗中傷はやっぱりありました。でもそれ以上に「待ってました!」「やっとこういう雑誌ができた」という声が、全国から本当にたくさん届いたんです。中には過去の私と同じように摂食障害に苦しんでいる人もいました。
「吉野さんの発信を見て、太っていても幸せに生きていいんだと気づけました」というメールを見たときは涙が出ました。「私がやってきたことは、間違いじゃなかった」と励まされましたね。
「ぽっちゃりモデルって言っても……もっと太った方がいいんじゃない?」
――約11年のモデル生活で、特に印象に残っている出来事はありますか?
吉野 楽しいこと、嬉しいこともたくさんありましたが、やっぱり世間の偏見と戦う11年だったという印象は強いですね。容姿や体型に悩む人を勇気づけようと思ってモデルになったのに、テレビ番組で「大食いキャラ」「お笑いキャラ」を求められることが何度もありました。撮影現場で「ぽっちゃりモデルって言ってもそんなにインパクトないよね。もっと太った方がいいんじゃない?」と言われたこともあります。
――いわゆる「デブキャラ芸人」のような扱いをされてしまったんですね。
吉野 テレビ局の人たちに悪気があったわけではないと思うんですよね。でも太っている女性に対する固定観念があまりにも強くて、それ以外の見方ができなくなっているんです。
だからこそ私はモデルとしてファッションやメイクを研究したり、他人のフィルターなしの自分の思いをSNSで発信していこうと決めてやってきました。「太っている人もおしゃれができる」「自分らしく生きていい」ということを言葉だけじゃなくて、行動で証明したかったので。
――最近は「ボディポジティブ」という言葉も聞くようになりましたが、吉野さんはこの言葉についてどう思われますか?
吉野 ボディポジティブのことを、「太っていることを正当化する」とか「不健康でもいい」と誤解している人が多いのは気になっています。検索すると「ボディポジティブ 言い訳」とか「ボディポジティブ 甘え」みたいな予測変換が出てきますし。
でもそうじゃなくて、ボディポジティブは自分の体を否定せずに尊重することだと思ってます。どんな体型であっても、その人には生きる価値があるというか。

