プラスサイズモデルとして活躍し、「もうええでしょう。二の腕の大きさが顔ぐらいある豊満な花嫁がいても」と投稿したブライダルフォトも話題になった吉野なおさん(39)。

 過激なダイエットと過食を繰り返す生活から、「好きなものを食べる」ようにしたらむしろストレスから解放されて体重も落ち始めた。吉野さんにとって自分にとって無理のない体型とはどんなものなのだろうか。(全3回の3回目)

吉野なおさん ©文藝春秋 撮影・橋本篤

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――「どんな体型でも幸せそうな人がいる」ということに気づいて、少しずつ自分を受け入れられるようになっていったのですね。

吉野なお(以下、吉野) 食べ物のことを考えて苦しむ時間がなくなって、生きるのが本当に楽になりました。でも同時に複雑な思いもありました。「なんで10年以上も自分で自分を苦しめ続けてきたんだろう」って。

 今は、SNSの普及で「痩せていることが正義」みたいなメッセージが最近はどんどん強くなっているじゃないですか。「1カ月で5kg痩せる方法」みたいな投稿がよくバズりますし、それで痩せた子を「すごい」「頑張ったね」と称賛する人も多い。

 たしかに、短期間で大幅に減量した子たちは努力したんだと思います。でも無理に痩せると、心身に大きな影響が出るんです。それを私は身をもって経験したからこそ、今悩んでいる人たちに何かできないかな、と思うようになったんです。

「私にはモデルなんてできるだろうか」から「これは誰かがやらないといけない」へ

――その思いが、プラスサイズモデルへの道につながった?

吉野 そうです。ちょうどそのころに「日本でプラスサイズ向けのファッション誌が創刊されるらしいよ」と教えてくれた友人がいて、それが『la farfa(ラ・ファーファ)』でした。

話題になった「ラ・ファーファ」の創刊号

 直前まで「太っている=醜い」と思い込んでいた人間なので、教えてもらったときも「私にはモデルなんてできるだろうか」と最初は躊躇しました。でもそれ以上に「これは誰かがやらないといけない」「私だからできることがある」とも思ったんです。

 

――『ラ・ファーファ』が創刊された2013年から専属モデルとして活動を始めたんですよね。当時はまだプラスサイズモデルという言葉も普及していませんでしたよね。

吉野 そうですね。創刊が発表されたときは「そんな雑誌、売れるの?」という声も多かったそうです。私自身もモデルになるとは決めたものの「デブが表に出るな」「見苦しい」なんて誹謗中傷を受けるかもしれない、という不安はありました。