低所得世帯の子どもは週一度も友達と遊べない

おおた そんななか「小学生の放課後の過ごし方調査2025」を発表されました。低所得世帯のお子さんの習い事が少ないとか、旅行の経験が少ないとか、そりゃそうだろうと思うわけですが、年収300万円未満の世帯の子どもたちの過半数が週一度も友達と遊べていないというのはショッキングなデータです(図)。低所得世帯の子どもたちは、友達と遊ぶ頻度が少なくて、遊びのバリエーションも少なくて、大人とのかかわりも少ない。なぜこんなことになっているのでしょうか?

 

平岩 考えられる理由の一つは、習い事でお友達ができたり、家族同士がつながったり、コミュニティができていく状況が、現代社会ではすごくあるなと思ってて。サッカークラブの子たちはサッカークラブの子たちで仲良くなる。もう一つは、低所得世帯は社会的な接点がもともとすごく少ないのではないかということ。もしかしたらおひとりで育てているかもしれない状況で、児童館に連れて行ったり、おじいちゃん、おばあちゃんの家に遊びに行ったりという習慣がなかったのかもしれない。そのまま小学校に上がってしまっている可能性があるかなと思います。加えてたぶん、いまの子どもたちは、約束をせずに遊ぶっていうことが成り立たない状況がよくあります。あそこに行けば誰かいるはずという場所がないので。親同士がLINEでつながっていないと、遊びの仲間にも加われない。

おおた だとすると、考えられる方法は二つあって、一つはみんなに習い事をしてもらう。しかもできるだけ多いほうが、多くのコミュニティに所属できる。そのぶん「遊ぶ時間がない」って話にもなりますが。もう一つは、昔の空き地や学校の裏山のように、「あそこに行けば友達に会える」と子どもたちが思える場所を、再生していく。どちらが望ましい社会だと思いますか?

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平岩 私としてはもう明らかに後者です。厳しいご家庭に習い事の費用を支援することは必要ですが、それをずっと続けるだけでなく、根本解決できるといいなと思います。費用はなんとかなっても、親御さんが送迎できないというケースもあります。時間がないというだけではなくて、そういう場所での親御さん同士のかかわりに気後れする方もいます。

おおた 正直な心理として、それはあるでしょうね。

平岩 あそこに行けばみんなに会えて楽しい時間がすごせると思える場所が全員に対してあることが根本治療だと思って、私たちの団体は活動しています。学校施設を活用すれば親御さんの送迎はいらないし、「市民先生」と呼んでいる地域の大人たちの力を借りることでスポーツも図工も料理も気軽に体験できる。

おおた 習い事と違って、いろいろな年齢のいろいろな子どもたちがいっしょに遊ぶこともできますし。

平岩 結構重い障害をもっている特別支援学校の子でも、ダンスとかやるとみんなといっしょに上手に踊るんです。高学年の子たちがその子の面倒を見るのが好きだったりもして。