プロの指導者ではないからできるかかわりもある
おおた さきほどの調査結果からは、子どもたちの「もっと遊びたい」という気持ちも伝わってきますよね。2023年度の調査でも、子どもたちは家族とのんびりすごしたり、友達と遊んだりする時間を求めていることがわかっていました。それが子どもたちが望む「ゴールデンタイム」なわけですよね。空き地や学校の裏山は立ち入り禁止になり、公園ですらボール遊びはおろか大声を出すことすらできない現代社会において、子どもたちのゴールデンタイムを取り戻す活動として、アフタースクールがある。
平岩 やっぱり子どもの声から始めるのが大切だと思ってます。言い換えると、子どもたちが自由にすごし方を選べることが大切です。アクティブにすごしたい子もいれば、家族とのんびりしたい子もいる。それが権利として保障されるべきだと思うんですよね。学校の時間はどうしても「1時間目はこれをやりましょう」ってはめ込まれちゃう。でもそれが終わったあとは、子どもが自分のやりたいことをできる社会にしていきたい。アフタースクールでは、本当に何もしないですごしてる子もいますし、ときには寝てる子もいます。一方でやっぱり世界を広げる可能性は大事にしてあげたいなと思います。「何をするかより、誰とするか」と言いますが、やっぱりひととの出会いが多ければ、それはいいだろうなと思うんですよね。
おおた やりたいことがなんでもできるわけではないだろうけれど、ただあきらめるんじゃなくて、どうやったら少しでもそれに似た体験ができるかをいっしょに考えてくれる大人が近くにいることが、子どもにとってはすごく大切なことのように思います。
平岩 実際、私たちが「子どもたちにこんなプログラムを提供したいから市民先生として協力してください」とお願いするよりも、「子どもたちがこれをやりたいと言っているので力を貸してくれませんか?」とお願いするほうが大人を巻き込みやすいんです。ある場所では、理髪店のおじいさんがアフタースクールで将棋を教えてくれることになりました。最初は戸惑っていましたが、いまでは「週1回のアフタースクールが生きがいだ」と言ってくれています。
おおた 市民先生が戸惑いながら教えてくれるというのも、プロの指導者が“正しい”プログラムに沿って教えてくれるのとは異なる意味合いを子どもたちにもたらすと思います。学校みたいに“正しい”指導者が子どもを引っ張るのではなくて、「これ、どうすればいいの?」みたいな子どもの「?」を主体にしたかかわりができそうです。言われたとおりにやって早く上達することよりも、そういう回り道みたいなやりとり自体に、子どもにとっての大きな学びがあるように思います。あそこに行けば友達にも会えるし、何かをしようと思ったら助けてくれる大人がいるし、何もしなくても誰も文句言われないし。
平岩 それが放課後ですものね、もともとね。
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