「なんで日本人は靴を洗わないんだ?」

――今日、ジェームスさんが履いているのはサンダルですね。

鶴本 これはタイヤでできたサンダルで、どれだけ砂利道を歩いても破けない丈夫なものなんですけど、これを出かける前に毎回、硬いブラシで洗うんです。今日も全然汚れてないのに、「これじゃ駄目だ!」と言って、また洗っていました。

「むしろ、なんで日本人は靴を洗わないんだ?」って言ってます。私は全然洗ってないんで(笑)。

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ジェームスさん(以降、ジェームス) なんでやねん。

鶴本 なんでやねん(笑)。ただ、「靴を洗え」みたいに、自分たちのカルチャーを押し付けてくることはないんです。たとえば、同じ集落のお姉さんたちが「教会に行こうよ」って誘ってくれることはあっても、行くのを強制することはないです。

マサイにとってのお金は「牛」

――金銭感覚の違いとかはいかがですか。

鶴本 マサイにとってのお金は「牛」なんですね。だから、相手の経済状況を聞く時は、「牛、何頭いるの?」という感じなんです。

 マサイが結婚する時には最低15頭は必要らしいんですけど、当時彼は牛を持っていなかったから、ザンジバルというリゾート地に出稼ぎに来ていて、そこで私に出会ったんですね。

護身用の棒は日本にも持ってきているという

――ちなみに、牛1頭は日本円でどのぐらいの価値がある?

鶴本 5万前後です。でも、今はどんどん牛の数が減ってきていることもあって、私が住んでいたマサイ村では観光シーズンになると村の男性陣が出稼ぎのためにほぼいなくなるような状況でした。

マサイの人たちは「夢」という概念がない

――今後のお二人の夢は?

鶴本 マサイの人たちは世代ごとにやるべきことが明確に決まっているので、「夢」という概念がないんです。だからジェームスに将来の話を振ると、いつも「ナニソレ、メンドー」みたいな顔をされます(笑)。

 彼は11人きょうだいの末っ子なんですけど、マサイ族では一番下の男の子がお母さんを養う役割があるんです。だから彼はお母さんに仕送りをして、村を豊かにしたいというのが常にあるので、そのために今は日本で働こう、という感じです。

 私は、タンザニアと日本を行き来できるような環境がいいなと思っていて、いつか子どもも欲しいと思っているので、そのためにも今はとにかく仕事を頑張らないとなって思ってます。