感情的な共感ポイント:コロナ禍という先行きの見えない時代に、「また明日から頑張ればいいよ」というタイトルで、多くの人の心に寄り添うものにした。

視覚的なギャップとストーリー性:中華料理屋という親しみやすい場所で、動物と人間が共存する世界観と、対照的なキャラクター、お会計をするのはシロクマかな?と想像させるストーリー性が共感を呼んだ。

適度な脱力感:パキッとしたイラストが多い中で、安心感を与えるタッチが受け入れられた。

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 つまり、「多くの人の目に留まるための設計」を最初から織り込むのだ。タイムラインの激流の中で一瞬でも目を止めてもらうには「SNSであまり見ないイラスト」にし(当時、動物と子供を温かい雰囲気で、かつ背景まで描き込むイラストは少なかった)、ネタや小ネタ、気づいた時に「あ、これってこういう風になってるんだな」と感じてもらえる要素を仕込む必要があるという。

 フジワラ氏の駄菓子屋のイラストは、これらの要素が見事に盛り込まれている一例だ。

©フジワラヨシト

 一見昭和の風景に見えるがこれはよく見ると、ゲームボーイでポケモンをやっている平成の風景だ。ターゲットをフジワラさんと同じ平成元年生まれ前後の世代に設定し、彼らにピンポイントで刺さる絵を描いた。その世代のクライアントさんに反応してもらいたかったこともある。狙い通り、同世代の共感を呼び起こし、多くのシェアを生んだのだ。

「バズる設計思考」をインストールする

 では、どうすればこのような「設計思考」を身につけることができるのか。フジワラ氏は、6つの具体的な習慣を提案する。

1 「なんとなく」の禁止:「なぜこの色にしたのか」「なぜこの構図にしたのか」、すべての表現に理由を持つ習慣をつける。誰に何を伝えたいのかを常に自問する。

2 ターゲットを一人まで絞り込む:「みんなに好かれたい」は誰にも刺さらない。「30代の児童書出版社編集者」のように具体的にターゲットを絞り込むことで、逆に多くの人に届くラブレターになる。

3 逆算思考を身につける:「何を作るか」よりも「なぜシェアされるのか」という出口から考える。仕事の獲得、認知拡大といったゴールから設計を始める。

4 「ただものじゃない感」を出す:うまい人はたくさんいる中で、「こいつはちょっと違う」と思わせる要素(細部へのこだわり、独自の視点、圧倒的な熱量など)を持つ 。

5 客観性を持つ:恥ずかしがらない。オリジナリティを追求しすぎるのではなく、王道を押さえつつにじみ出る個性を目指す。ハリウッド映画のように多くの人が共感できる型を意識する。

6 言語化の習慣を持つ:自分の作品の意図を説明できるようにする。普段から「感覚的」ではなく「戦略的」に語れるようにすることで設計思考が磨かれる。

バズった投稿例  ©フジワラヨシト

  フジワラ氏が最近立ち上げたアカウント「絵を描く人」は、まさにこの設計思考を駆使して作られ、わずか3ヶ月足らずで3.2万人のフォロワーを獲得し、いくつもの投稿がバズっている。すべての投稿に意図があり、ターゲットが明確で、逆算思考に基づいている。このアカウントそのものが「設計思考」の生きた教材と言えるだろう。