初著書『コネ、スキル、貯金ナシから「好き」を仕事にするまでにやってきたこと』が話題のイラストレーター・フジワラヨシトさんと、数々のビジネス系ヒット作で知られる漫画家・あんじゅ先生とのスペシャル対談が実現。フリーランスのクリエイターとして生きていくための秘訣を存分に語り合った。
◆◆◆◆
ゼロから出発した二人の共通点
フジワラ 本日はゲストとしてお越しいただきありがとうございます。以前からあんじゅ先生の精力的なお仕事には感銘を受けてきたのですが、初めての対談すごく楽しみです。
あんじゅ こちらこそお招きいただき光栄です。まず定番の自己紹介をやらせてもらうと、“昭和が生んだ天才美少女漫画家”あんじゅ先生です!! よろしくお願いします。
フジワラ じつは私とあんじゅ先生には共通点があって、私は最初お酒の営業職をしていて、イラストやデザインとはまったく関係のない会社員として働いていたんですね。2020年、適応障害になったことを機に会社を辞めて、フリーランスのイラストレーターとしての活動を開始しました。
もともと勤め人で、無い無い尽くしのゼロから出発して、SNSを駆使して仕事の活路を開いてきたところが、あんじゅ先生と似ているように思います。
あんじゅ 私は大学を卒業後、そのまま母校の大学に正規の職員として就職し、5年ほど入試関係の仕事をやってたんですね。そろそろ大学をやめて別のことをしようと思ったとき、絵や漫画を描くのがずっと好きだったから、イラスト描こうかな?って始めてみたんです。
本当に何もわからないままフリーランスになって、知り合いの編集プロの女社長に絵の仕事がないかと思って連絡したら、「イラストの仕事はないから自分で記事書いてそこに絵をのっけろ」って言われて(笑)。当時、貯金はゼロ円で、ライターとして一記事2000円のコラムを毎日毎日書いて、絵をつけるところからスタートしました。
大学を辞めてから10年、なんとかここまでやってこれたわけですが、フジワラさんの著書では、まったくゼロの状態からどうやってブランディングしたかが惜しみなく書かれていてびっくりしました。私なら、自分が苦労して編み出したテクニックは明かしたくないですよ!
フジワラ 私はやっと5年目でまだまだですが、どのあたりでそう思いました?
手塚治虫のように全部オープンにしていて…
あんじゅ 漫画とイラストレーターの違いもあると思うんですけど、漫画って自分をキャラ化してブランディングしやすいのに対して、イラストでSNSで人の注目を集めるのはめちゃくちゃ難しいでしょ。
でもフジワラさんは、先輩イラストレーターたちの歴史を踏まえつつスタイルを確立して、わずか2年くらいで、階段を一気に駆け上がるようにフォロワーを急増させましたよね。イラストのテクニックから自分がどうSNSに向き合ってきたかまで全部オープンにしていって。
そこでふと思い出したのが、手塚治虫でした。手塚治虫先生は漫画の描き方や、背景の工夫とか、いろんなキャラクターの作り方とか全部書いて残してるんですよ。天才が後世のために全部内容を公表してくれている。そのイラストレーター版が本書じゃないかなと思ったくらい、クリエイター初期段階で大きな支えとなる、長く愛される一冊になると思いました。「こうすれば皆さんできますよ」ではなく、「私はこうやって苦しんで実践してきたよ」という伝え方も魅力的で。
フジワラ ありがとうございます。一枚10円の似顔絵描きとして全国を放浪したし、サラリーマンもメンタルを壊して続けられなかったし、本当に紆余曲折ばかりの人生を送ってきたので、自分のやってきたことが誰かの後押しになればと思って書きました。