――好きな作品との出会いからイラストレーターを目指すようになったんですね。
ゆいめろ 高校では美術コースに所属していたので、美術の先生にイラストレーターになる方法をいろいろと聞いて。「美大に進学するのがいいよ」と背中を押してくれたんですが、入試科目のデッサンが難しくて。
しっかり対策するには絵画教室に通わないといけませんし。金銭的に余裕のある家庭ではなかったので、受講料を考えた時に塾に通うかどうかすごく悩みました。
大金を使って塾に通ったとしても合格できるとは限らない。わたしが途中で受験を諦めてしまう可能性もある。そういうことを考えた結果、塾に通わないことを決めて、美大への進学もイラストレーターになる夢も諦めました。
――大きな挫折ですね……。
ゆいめろ 美大への進学を諦めた時に、絵を描くことも嫌いになったんですよね。これ以上描いてもなんにもならないなって。SNSでの発信もやめました。イラストの世界から遠ざかりましたね。
挫折して医療事務に就職するも…
――高校卒業後はどのような進路に進んだんですか。
ゆいめろ 一般企業の就職に切り替えました。就職活動の求人の要項を見ながら、担任の先生と相談して、給料が高い病院の事務職に就職することにしました。
――イラストレーターとは真逆の世界ですね。
ゆいめろ わたしは診療報酬の点数計算という業務を担当していて。国が定めたルールをもとに病院が行った診察の点数を計算するんですけど、パズルを組み立てていくみたいでおもしろかったです。
「この時は計算できるけど、この時はダメなんだ!」と気づく時もあって。楽しく仕事に取り組んでいました。
――気持ちをしっかり切り替えられたんですね。
ゆいめろ 職場からの評価も悪くなかったと思います。人手不足だったのもありますけど、20歳の時に事務長になりました。
ただ、事務長になると仕事がガッと増えて。診療報酬の計算だけではなく、他のスタッフの業務もチェックしなければいけなくなったんです。
とても1人でこなせないくらいの業務量でした。日付を過ぎてから退社する日も増えて……仕事に疲れてしまって病院をやめることになったんです。
写真=松本輝一/文藝春秋
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