ベトナムは数年前まで、「優秀かつ安価な労働力」と、中国に替わる生産拠点として注目されていた。だが近年では人件費の高騰などがあり、世界からみると生産拠点としての魅力は以前より薄れているようだ。

 しかしインド同様に北部にある首都のハノイ、南部にある経済の中心地ホーチミンに人口が集中しており、都市の人口分散のため郊外の開発が急務になっている。有名な地下鉄ハノイ(中国が受注)とホーチミン(日本が受注)、さらに両都市をつなぐ高速鉄道網の建設もその一環だ。

 なかでもホーチミンから車で30分ほどの郊外の開発が注目され、日本企業も参入してベッドタウンの開発が進んでいる。そのほど近くで2014年から電材工場として操業しているパナソニックのベトナム工場がある。

ADVERTISEMENT

スイッチの耐久試験なども全自動化され、現地向け製品の研究開発も行われている(筆者撮影)

ベトナム現地で感じたヒト・モノ・環境

 インド工場は、安い人件費で人海戦術による生産がメイン。オートメーション化は一部のみという感じだったが、ベトナム工場は日本の津工場に並ぶほどのオートメーション化が進んでいる。手作業は、細かい部品が多くオートメーション化するには経費がかかるブレーカーの製造工程、および壁スイッチの一部工程、出荷用のパッキング工程くらいだ。

オートメーション化のため人員は少ない(筆者撮影)
組み立ての小型ブレーカーは人手で組み立てられる(筆者撮影)
ラインに立つ生産・検査の作業員は、取材陣がカメラを構えても気にすることなく作業を続ける(筆者撮影)

 電材の要のひとつとなる、難燃性の樹脂加工、デザイン性の高いスイッチパネル部分の樹脂加工もすべて工場内で生産。また金型のメンテナンスも社内で熟練工が、ヤスリで仕上げる様子は日本と変わらない。

 検査工程なども自動化され耐久テストや電気的性能の検査なども、日本と変わらぬ装置を使いテストして、日本品質を担保しているようだ。

樹脂成型などの金型は、すべて工場内でメンテナンスする。新規の金型の一部も工場内で製作するという。これは日本国内でも珍しい(筆者撮影)
先端の組み立てが難しい小型ブレーカーは「ものづくり道場」というトレーニングルームでしっかり研修できるようになっている(筆者撮影)