日本と同じ「安全道場」で徹底指導

 唯一の違いは、電線と端子部分だ。日本は芯線が直径2mm程度の1本の銅線(単芯)を使い、スイッチの穴に差し込むとネジ不要で固定できる「速結端子」だが、ベトナムはテーブルタップなどで使われる細い線を束にして使う「より線」をネジで締める端子だ。電線を「?」型に曲げて「巻き締め」するのではなく、直線のまま金属端子の間に挟み込みネジで締める「ピラー端子」になっている。

日本のコンセントと違うのは、日本が電線を差し込むだけで結線完了なのに対して、ベトナムは最後にネジで締める点。電線も単芯とより線の違いがある。こうして国別に対応する必要もある(筆者撮影)

 さらに動力を使ったり高所での作業があるため、日本と同じ「安全道場」が設けられている。新しくラインに就く作業員は、全員がここで安全性や事故予防などについて徹底的に叩き込まれる。

 さらに世界の標準となっている「カイゼン」は、現場作業員が「モンダイ」や「カイゼン」の提案をふせんに記入する形で自発的に提起して、掲示板に貼り出し、情報を共有するという方式を取っていた。この掲示板は活用されているようで、意識の高さを感じた。

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KAIZENボード。製品ごとの段に週の改善や問題点を提起する。左にはカイゼン結果がどうなったのかが示されている(筆者撮影)

 このようにお国柄に合った製造方法を使い分けてはいるものの、日本の技術や機械を積極的に取り入れ、日本と同じ教育システムで「製品を作る前に人を育てる」が徹底されている。日本の電材100年の歴史からなる技術と心が受け継がれているのだ。

パナソニックが世界トップになる日も……

 パナソニックのコンセントが日本でシェア1位という驚きもさることながら、注目すべきは安全や安定した品質という点で、東南アジア各国でもシェア1位となっている点だ。価格力がものを言う製品も多い中で、日本の電材への評価は中国の弱点を突いた世界進出と言えるだろう。インド、そしてトルコの電材市場でも日本製が進んで利用され、次はいよいよヨーロッパで日本製の電材が試される番だ。

 競合電材メーカーがひしめく中、パナソニックが世界トップに躍り出る日を楽しみにしたい。

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