さらにパナソニックの電材は、主要製品が三重県の津工場にてフルオートメーションで生産されており、価格面でも中国に劣らないコストパフォーマンスを誇っている。市場価格は1個数百円程度という世界の電材において、本来なら中国に飲み込まれてもおかしくない電材事業。しかし中国に対抗できる価格に加え、中国では真似できない安全性と品質の高さと安定性が世界で選ばれている理由だ。

三重県の津工場。国内向けのコンセントや壁スイッチなどは、ほとんどが津工場で製造される(筆者撮影)
巨大なラインが組まれ金属や樹脂部品の製造から組み立て、パッキングまですべて自動化されている(筆者撮影)

 また日本製の電材は施工性についても評価されている。施工者の経験が浅くても安全で確実に施工できるよう配慮されており、電線の接続や設置の簡便さ、電材の組み合わせの標準化などが突き詰められ、施工時間の短縮や施工者の負担軽減まで考えられている。実に日本人的な気配りがなされているのが、国産電材の強さの根源なのだ。

 パナソニックは2007年にインドの電材トップメーカーANCHOR(アンカー)社を傘下に収めた。こうしてインドの電材シェア1位を獲得。電気系の火災が多いインドでは、同社の品質や難燃性などにより非常に高評価だという。

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 そして2014年にトルコの電材会社ナンバーワンViKO(ヴィコ)を買収。同社は欧州や中東でも電材の高い販売実績を持っているため、ヨーロッパの足掛かりを得たことになる。

インドの首都デリー近くにある北部(ハリドワール)工場。地元企業のANCHORを買収したことで、インドのシェア1位となった(筆者撮影)
まだ一部は人海戦術が残る(筆者撮影)
インド南部(スリシティ)工場。日本と同じ生産ラインを取り入れ、販売や輸送もDX化した最新工場。人はほとんどいない(筆者撮影)