「衝動的に剃刀を握って、自分の髪の毛を全部、自分で剃ったんです。剃っているうちに、涙が止まらなくなって」
20代の頃、原因不明の脱毛症により体中の毛が抜け落ちていったインフルエンサーの葉月さん(46歳)。当時、鏡を見て「まるで落ち武者のよう」「人生ドン底」とまで思いつめ、冒頭のような行為に走る。心もカラダも決してヘルシーとは言えなかった彼女が、その後は恋愛、結婚、出産などを経て、多くの幸せをつかめた理由とは?(全3回の2回目/最初から読む)
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自宅2階から飛び降り→父も涙する事態に…
――自宅の2階から飛び降りた後、どうなったのですか?
葉月 背骨を骨折していたので、ヘリコプターで病院に運ばれました。運ばれた先の病院では、「半身不随になるかもしれない」と言われました。そこで、普段は寡黙で冷静な父が泣いていたと聞きました。
その後すぐに父の勧めで東京の病院に転院したんです。そこでは「神経に特に問題があるわけではない」と診断されて、骨が自然回復するまでの2ヶ月間、ベッドで安静にするだけの日々を過ごしました。トイレもお風呂も行けず、本当の寝たきり状態でしたが、無事歩けるようになるまで回復しました。
――よかったです…。
葉月 それで自宅に戻ったある日、洗面台の鏡で自分の姿を見たんです。髪はほとんど残っていなくて、ざんばら髪の状態で、一部だけ長く伸びた髪の束がいくつかありました。その束もほとんどすかすかで、まるで落ち武者のようでした。そんな自分を見ていたら、たまらなくなって。衝動的に剃刀を握って、自分の髪の毛を全部、自分で剃ったんです。剃っているうちに、涙が止まらなくなって。「私、何してるんだろう。とうとう、ここまで落ちたか」って思いました。
――自分で剃られたんですね。
葉月 はい、号泣して鼻水も垂らしながら、自分で自分の髪の毛を全部剃り落としました。それで丸坊主になった自分の姿を鏡で見て、情けないし、ドン底まで落ちたなと救いようのない気持ちになりました。ただ、ドン底まで落ちたと思ったら、不思議と「このままの人生は嫌だ」と思ったんです。
ここまで落ちたら、あとは這い上がるしかないという、闘志みたいな気持ちが湧いてきました。それまでは感情もなく、横になるだけの生活だったので、自分でも驚きました。そこから徐々に、「自分が動かないと何も変わらない」という気持ちになったんです。
――ふっきれたんですね。
葉月 そうですね。それから時間が経つにつれて、自分がやりたかったファッション関係の仕事に、もう一度挑戦したいという気持ちも芽生えてきました。そこから体調を見ながら、就職活動もはじめていきました。回復するまでには数年かかりましたし、過食嘔吐で動けなくなることもありました。
父が経営するクリニックの受付をしたり、雑貨店で営業事務の仕事をするなどして働きました。働くことで、決まった時間に起きて動く生活が少しずつ定着していき、生活も整っていきました。30歳になってようやく心も体も安定して、アパレルのお店で販売員として働けるようになりました。
――脱毛症の症状はどうなっていましたか?