――確かに、性的な魅力に振り切ったハーレムと違って、相手との年齢差や関係性でベリルはいろいろな顔が出ますよね。
佐賀崎 彼のかっこいいところが「すごいスキルを持っていること」よりも、「誠実に生きてきた積み重ね」に見えて欲しいんですよね。年齢を重ねることは衰えでもあるけど、同時に積み上げでもある。自分も年齢が上がってきたので、なおさらそう思います。
――SNSではベリルが「理想の上司だ」という人もいました。
佐賀崎 確かに僕自身も長く社会人をやっていたので、年下との関係性はどうしても「上司vs.部下」という関係がベースになっていると思います。部下を持った経験もあるのですが、上司としてどう振る舞うのかはとても悩んだので、ベリルの言動には良い上司から学んだことや、逆に「これはやってはいけない」という反省も含まれていると思います。
「私自身はいい上司だったとは全然言えず、完全にパワハラな怒り方をしてしまった時のことを今も後悔してるんです」
――「叱っても怒らない」「自分に一番厳しい」というベリルの性格には会社員時代の経験が反映されているんですね。
佐賀崎 私自身はいい上司だったとは全然言えず、完全にパワハラな怒り方をしてしまった時のことを今も後悔してるんです。新人の部下がミスをした時に、ウソをついてごまかそうとされたことがあり、机を叩いて声を荒げてしまったんです。同僚に驚かれて「新人のウソは良くないけど、その怒り方も良くない」と注意されました。
――そのときはどう感じていたのですか。
佐賀崎 たぶん当時は「その人のためを思って」というつもりでやっていたんだと思います。でも振り返ってみると、あれは明らかにやりすぎでした。だからベリルは叱りはしても怒ることはほぼありません。感情を出すのは、弟子や仲間に危害を加えられたときだけです。
――「自分は今まで若いやつのために何かできていたのか」というベリルの自問は、佐賀崎さん自身の問いでもあったのでしょうか。
佐賀崎 そうですね、自分が40年考えてきた反省や葛藤がそのまま出ていると思います。僕自身、これまでの人生で若い人のために何か具体的にしてきたかと聞かれたら、正直、胸を張って「できた」とは言えないと思っていて。自分のことで精一杯だったというか。

