被害者はメディアでも「人気No.1の耳かき小町」として知名度を広げていた21歳の女性…。平成21年に起きた、耳かき店の女性セラピストと彼女の祖母が常連客に殺害される事件。当初は良好だった2人の関係が、殺人にまで発展した理由とは? なおプライバシー保護の観点から本稿の登場人物はすべて仮名である。(全3回の1回目/2回目を読む)

写真はイメージ ©getty

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常連客を阿修羅にした耳かき嬢の“膝枕マジック”

 吉田敦史(当時41)は電気関係の専門学校を卒業後、配電設備の会社に就職。28歳から一人暮らしを始め、独身貴族を謳歌していた。性欲はもっぱら風俗で解消していたが、他の面ではしまり屋で、貯金は1000万円を超えていた。

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 ある日、吉田はネットで「マッサージ店」を検索していたところ、風俗店とは異なる“耳かき店”を見つけた。性的サービスはないものの、ビジュアルの良い若い女性が膝枕などをして癒してくれるというものだった。

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 興味を持った吉田は、その店に来店。最初に接客したのが、のちに被害者となる鈴川里奈さん(同21)だった。吉田はまるでクラスの優等生のような里奈さんの雰囲気に魅了された。

 それ以来、吉田は週末ごとに里奈さんを指名して通うようになり、60分4800円の“膝枕マジック”の虜になっていった。

 里奈さんの20歳の誕生日、「店に来てほしい」と言われた吉田は、近くの駅でプレゼントのゼリーを買い、駅のコンコースを歩いていたところ、里奈さんとバッタリ会ってしまった。

 それを「待ち伏せ」と誤解された吉田は、店に行きづらくなり、いったん店に通うのを止めたが、数日後、里奈さんがブログで〈突然だけど元気かなぁピヨ吉(里奈さんと吉田しか知らない人形の名前)〉と書き込んだメッセージを見て、自分に向けられたものだと直感。店で里奈さんに会って誤解を解き、それがきっかけで一気に打ち解けると、それ以降は1日7~8時間も粘るようになった。

 里奈さんは吉田のことを信用し、自分の家族のことなども話すようになった。吉田の会社の本店がたまたま里奈さんの自宅近くにあり、駅から自宅までの道順を弾みで話してしまったこともあった。家の前で家族全員で撮った写真を見せたこともあった。また、高校時代の話をしていたときに自分の苗字もポロッと口にしてしまった。