「犯人については、死刑に処していただきたいのです。どうか裁判員の皆様、裁判官の皆様、適正な判断を示してください」
裁判では、父親が「母と娘を殺した犯人」の死刑を望む場面も…。平成21年に起きた、耳かき店の女性セラピストと彼女の祖母が常連客に殺害される事件。犯人男性にくだされた罰とは? なおプライバシー保護の観点から本稿の登場人物はすべて仮名である。(全3回の3回目/最初から読む)
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取り調べでは泣きっぱなし
吉田は取り調べでは泣きっぱなしだった。しかし、公判では「自分は20代で膠原病にかかり、結婚をあきらめていた。里奈さんに恋愛感情があったわけではない」などと弁解した。
検察官:里奈さんに恋愛感情はなかったということですが、それならどうしてこだわったのですか?
被告人:それはよく分からないです。
検察官:どうしてあきらめることができなかったのですか?
被告人:それは分かりません。それが分かっていたら、こういうことにはなりません。
検察官:それなら里奈さんにどうして怒りを感じたのですか?
被告人:今思うと、とても自分勝手な感情だと思います。
検察官:そうではなく、どうして怒りが湧いたのか聞いているのです。里奈さんの何に怒ったのですか?
被告人:それは……、出入り禁止の解除を許してくれない理由を言ってくれず、話の途中で行ってしまったので……。
検察官:捜査段階で「この時期に里奈さんへの憎しみを抑えきれず、殺してやりたくなった」と言っていませんでしたか?
被告人:怒りの度合いが大きくなったことは言いました。「殺す」という言葉を使ったかは覚えていません。
裁判官からも質問があった。
裁判官:あなたは、恋愛感情が満たされず、ストーカー行為の末に里奈さんを殺害した、といわれるのに不満を感じているのですか?
被告人:不満というか……。違っているところは、違っています。
裁判官:それは恋愛感情というところですか?
被告人:はい。
裁判官:恋愛感情と、あなたが言っていた「広い意味での好き」というのは、どう違うんですか?