「大人って楽しいよ」と本気で伝えたい

フジワラ すごく共感する言葉です。私は常々、「好き」の強度をきちんと上げていく大切さを感じています。今イラストを描いている若い方々を見ていると、自分が心から好きなものより、周りが好きなものを描いているように感じることも多いので、自分の「好き」を研ぎ澄ませて、できるだけ言葉にしていくのがいいと思っています。

 ちなみに私は中学生のころ「おかあさんといっしょ」を母と一緒に見ていたのが恥ずかしくて周りに言えなかったんですが、今思えば、もっと堂々と「これが大好きだ」と言えば思春期をこじらせずにすんだのかも(笑)。

 自分が本当に好きなものを自覚した上で、それを積極的に発信し、他の人にも好きになってもらう努力をしていくのが、これからのクリエイターの生き方なのかなと思います。

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さいとう 「おかあさんといっしょ」ってめっちゃマーケティングの勉強になりますよね(笑)。親世代にも子ども世代にも愛されていて。

 僕がひとつ決めているのは、つまらなそうな顔をしている大人にはならないということ。どんな仕事をするにせよ、「大人って楽しいよ」ということを本気で伝えたい。表現したいという一番の根っこには、それがありますね。

フジワラ つまらなそうにしている大人にこそ楽しさを伝えたい。最近よく野外で水彩のスケッチをしているんですが、デジタルの作画とは違った楽しさがあって、面白くてたまらないんです。

さいとう 僕もアナログで絵を描きますが、かかる時間も含めてプロセスを楽しめる良さがあるんですよね。「ああ、人生ってこんな感じだったな」と思い出すというか(笑)。

フジワラ それって最高の時間ですね! 今日は刺激的なお話をありがとうございました。

さいとう こちらこそ、楽しかったです!

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さいとう なおき

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最初から記事を読む 国民的“神絵師”さいとうなおきと“1枚10円の似顔絵師”出身のフジワラヨシトが語る、己を駆り立てた「屈辱の言葉とルサンチマン」