クリエイターの仕事が多様化する現代、仕事の未来はどう変わるのだろう? 児童向けの本や広告の分野で活躍するフジワラヨシト氏と、業界のトップランナーとして走り続けてきたさいとうなおき氏の白熱対談。
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ソーシャルゲームの波が引いて、仕事が激減
さいとう ところで、僕らが20年前に言っていたイラストレーターの仕事と、いまの内容ってかなり違いますよね。単一のイラスト作品を描いて終わりではなく、例えばあるキャラクターに付随して商品パッケージや広告素材、LINEスタンプやアニメーションへと多面的な展開を含んでいたりします。
大きな変化の波にさらされてきた業界で、例えばソーシャルゲームの波がドーンときたときには仕事が急増して、これまで全然知らなかったイラストレーターが“有名絵師”として次々に出てきました。でもそのソシャゲの波が引いたとき、仕事が激減したりしてショックを受けました。
フジワラ そこまでの大変化だったんですね。いまは一口に「イラストレーター」といっても、意味するところの幅がすごく広くなってきました。クライアントを誰にするのか、どの業界で勝負するかによって活動の中身もまるで違います。従来なら、イラストレーターとして描いた絵そのものに最大限の価値があった。
さいとう 作品そのものの価値はもちろんですが、それを作るプロセスや、作品から生まれるコミュニケーションも含めて商品価値になってきましたね。誰がどういう背景で描いたかも、その商品性のなかに含まれている。
イラストも「プロセスエコノミー」の流れに
フジワラ けんすう(古川健介)さんが「プロセスエコノミー」という概念を提唱されていますが、完成されたコンテンツを売るだけでなく、「双方向的なコミュニケーション」のなかでプロセスをありのまま公開し、制作過程を収益化する流れは今後ますます強くなっていくと思います。
ある意味、絵の技術という画力だけで勝負できる時代は終わりつつあって、プロセスやそこにあるストーリー性こそが重要視されていく。さいとうさんはそのパイオニア的な存在としてYouTubeで絵を描くプロセスもどんどん発信されてきたじゃないですか。海外のイラストレーターは顔出しして、考え方やプロセスの発信に積極的な方が多いですが、日本ではさいとうさんに続く方がまだまだ少ない気がします。
さいとう でもまあYouTubeって、やっぱり大変なんですよ(笑)。プロセスを見せるために、描く順番も考えなきゃいけないし、動画にわかりやすくまとめようとすると自ずと窮屈な描き方になってしまう部分もいろいろあるから。
フジワラ しかし制作の背景をふくめてトータルで自分自身を商品にすることに成功されていて、すごく参考になります。昨今はマネタイズの方法として、イラスト単体での収入だけでなく、イラストの世界観でグッズを展開したり、オンラインセミナーを行ったり、コミュニティを作ったりと多角化している流れですし。

