「これが日本の村の風景なのである」
だいたいこういう山の中の村というのは、これまでも足を運んだ檜原村にしろ、神奈川県の清川村にしろ、構造が瓜二つといっていいほどよく似ている。
村のほとんどが山の中で、その中を流れる川が刻んだ河谷沿いの小さな平地部に町が形作られているのだ。町といっても“市街地”などと呼べるほどの規模はなく、川沿いの道に沿って民家やいくつかの商店などが並んでいる。
だから、村の中心部といったところで、どこが中心なのかが判然としない。これが日本の村の風景なのである。
東秩父村も例に漏れず、秩父山地を削って流れる槻川沿いに集落が続いているような、そういう村だ。さっそく、槻川沿いを歩いて東秩父村を散策してみよう。
ずいぶん綺麗な川を眺めながら北へと歩く
バスを降りたのは、東秩父村の役場がある一帯よりも少し先、目の前に小さな駐在所があるあたりだ。
もちろんここもすぐ近くに槻川が流れている。小さな橋の袂に川縁まで降りていけるところがあったので、近くで川面を見てみると、なかなかどうして清らかな清流だ。
秩父の山は石灰石や珪石といった鉱物がよく採れるという。きっと、そんな山から流れ出る川の水もミネラル分を豊富に含んでいるに違いない。うかつに飲んだりはしませんが。
川沿いの道を少し北に歩くと、ふたつの川が合流する地点に出る。具体的にいえば、大内沢川が槻川に注ぐ、というところ。そこにも橋が架かっていて、落合橋と名付けられている。
“落合”とはふたつの川が落ち合う地点という意味で、日本全国あちこちで見られるいわばベタな地名だ。ここでは道路もまた落ち合っていて、交差点の名も落合橋という。
落合橋の近くには古民家をリノベしたカフェがあり、また「落合の店」という看板を掲げた店もある。どちらもあいにく営業していなかったが、ハイキングやツーリングなどでやってきた人にはありがたいお店なのかもしれない。
さらに交差点には「みかん狩り」「フィッシング」といった観光客向けの看板が立っている。こうした山間の村は目立った産業が育ちにくく、観光農園やヤマメ釣りなどを売りにしていることが多い。これまた東秩父村もご多分に漏れず、というわけだ。





