みそポテト、わらじかつ、味噌に漬け込んで焼いた肉、そして日本酒、ウイスキー……。脈絡のなさそうなこれらのグルメ、どれも埼玉県は秩父市の名物である。
秩父の名物はまだまだある。三峯神社はパワースポットとして知られているし、毎年冬先の秩父夜祭は300年以上の歴史を持つ豪奢な例祭。遠い昔には海の中だったというジオスポット的な注目ポイントもあれば、秩父鉄道のSLパレオエクスプレスも大人気。少し足を伸ばせば荒川が刻んだ長瀞の渓谷美もある。
……と、秩父という町はこれほどたくさんの見どころ食べどころに恵まれた、東京近郊では一二を争うような観光地なのだ。こういったことは、観光ガイドの類いにすべてきっちり書いてある。
なので、秩父には何がある?などというおなじみの設定の答えは、もはや出ているといっていい。それやこれやの観光スポットがあって、観光客のための店などもあって、たぶん町を散策している人たちで賑わっているのだろう。パワースポットがあるのだし、若い人が好みそうなスイーツのお店などもあるかもしれない。また、山に囲まれた町だから、ハイキングや登山にやってきた人たちを受け入れるような施設もありそうだ。
とはいえ、それでも仕事なので行かねばならない。端から見ればまるで観光そのものなのだが、それを書くというのはなかなか大変なんです……。
そもそも秩父まではどのくらいかかる?
さて、まずは秩父という町が、いったいどこにあるのか、から始めよう。
埼玉県秩父市があるのは、埼玉県の西の端っこの山の中である。東京都心から秩父に行くときは、西武線を使うのがいい。池袋駅から玄関口の西武秩父駅まで、特急「ラビュー」が走る。練馬も保谷も所沢も越えて、飯能あたりからは山の中に入って長いトンネルも抜け、だいたい1時間20分くらいで西武秩父駅だ。
都心から1時間30分程度の観光地。日帰りで充分ではあるのだが、川越や高尾山、はたまた新幹線で行ける熱海などと比べると、いささか遠いきらいも否めない。そもそも特急に乗るためには池袋駅まで行く必要もありますからね。
「秩父といったら西武線」と思っていませんか?
ちょっと歴史的な話をすると、西武線が秩父に乗り入れるようになったのは比較的最近のことだ。1969年に吾野~西武秩父間の西武秩父線が開業した際に、西武秩父駅もできた。つまり、50年ちょっと前のお話である。