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「秩父」の“もうひとつの顔”

 なお、秩父鉄道は秩父に乗り入れてからいまに至るまで、採掘された石灰石の輸送を担っている。沿線にはセメント工場もあるから、いわば原料立地工場というやつだ。また、西武秩父線開業の目的のひとつも武甲山の石灰石。武甲山の麓にいちばん近い、横瀬駅付近にあった貨物駅から実際に石灰石輸送を行っていた。ただ、西武線の貨物輸送はとうの昔に終了。いまは、地下を通るベルトコンベアなどを使って輸送している。

 つまり、秩父の町は、観光以外にも石灰石とセメントという大きな産業を持っている、というわけだ。むしろ、石灰石があったから西武秩父線が開業し、東京都心と直結したことで、観光開発にも拍車がかかった、というほうが正しいだろう。武甲山は、こうしたちょっと変わった形で秩父の町に恵みをもたらしているのだ。やっぱり、神の宿りし山である。

西武秩父のすぐ近くには「御花畑」という楽しげな名前の駅が…

 さて、いつまでも山を見上げていても仕方がないので、秩父の町を歩こう。西武秩父駅のすぐ近くには、秩父鉄道の御花畑駅という実に楽しげな名前の駅がある。線路は繋がっていても直通列車が少ないから、秩父鉄道に乗り継ぐ人はこの駅を使うことになる。

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 御花畑駅といっても実際に花畑があるわけではない。秩父夜祭で行列が目指す御旅所を「お花畑」と呼ぶことにちなんだものだ。いまは副駅名が「芝桜」。市街地の東で町を見下ろす羊山公園の芝桜からもらったもので、ほんとうにお花畑の駅になってしまった。

 

 実際の御花畑駅は、前後を踏切に挟まれ、さらに駅のすぐ脇には商店が迫っている路地のような奥まった場所にある。レトロな駅舎にレトロな商店。駅舎の脇の立ちソバもまた、どことなくレトロだ。このレトロ感は、もしかすると秩父の大きな魅力なのかもしれない。