池袋から西武池袋線に乗って所沢より遠くに行こうとするには、なんだかちょっとした気合いが必要な気がしてしまう。お叱りを受けるのを覚悟で言えば、“東京”から離れて一線を越えるというか、日常の通勤電車から“旅”に変わるというか、そんな気がするのだ。

 実際には、所沢は池袋から早ければおおよそ20分で行けるところで、実はたいして遠くない。中央線なら新宿から三鷹を超えたくらいの距離だ。車窓を見たって所沢を越したところでちょっと田畑が増えるかな、というくらいの違いしかない。

「飯能」には何がある?

 だから単なる印象で語っているだけなのだが、所沢は西武池袋線の旅をするにあたってなんとなく特別な境界のような存在になってしまっている。そして今回やってきたのは、そんな所沢駅からおおよそ25分の場所の飯能駅である。直通先の副都心線や東急東横線を通じてみなとみらいからも列車がやってくる、その終着駅のひとつだ。

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 これまた印象ばかりで語って恐縮だが、東京都心から2、3度くらいは寒く感じる飯能駅のホームに降りる。飯能駅はスイッチバック構造になっていて、池袋方面に向かう列車も秩父方面に向かう列車も、どちらも同じ方向に進んでいく。このあたりの事情をわからずにホームの電車に飛び乗ると、間違えた方向に行ってしまいそうだ。

東急&有楽町線“ナゾの終着駅”「飯能」には何がある?

 駅名標には駅の名の脇に「ムーミンバレーパーク最寄駅」とある。脇にはムーミンのキャラクターもあしらわれている。2018年にオープンした、飯能の新たなシンボルだ。ただ、駅からはちょっと遠く、ムーミンに会うためには電車からバスに乗り継がねばならない。なので今回はそこまで足を伸ばさず、いつも通り駅の回りを歩くことにする。

今回の路線図。所沢駅からはおおよそ25分の場所にある「飯能」

 飯能駅はスイッチバック、つまり櫛形のホームの頭上に橋上の駅舎と駅ビル商業施設のPePeがある構造をしている。PePeは歌舞伎町ユーザーならばよく知っている、西武新宿駅にもあるあのPePeだ。所沢にはないが、他に本川越や入間といった西武沿線の要所に店を構える商業施設。飯能駅にもそれがあって、駅の賑わいを生み出しているというわけだ

飯能駅はスイッチバック、つまり櫛形のホームだ
西武新宿駅にもある「PePe」

南口に出た。歩いて行くと…「摩訶不思議な共存関係」が

 PePeはさておいて、駅の外に出る。飯能駅には南口と北口があるので、特に理由はないけれどまずは南口に出た。あまりひとけのない駅前のロータリーがあって、まっすぐ駅の正面に向かって大きな道が伸びている。美杉台通りという。そこを歩いて行くと、「DERUPARA」と書かれた看板を掲げた大きな建物があった。