自著を「まだ読んでない」、“ステーキ事件”で大喧嘩も…

 松本の天然ぶりはつとに知られる。『オールナイトフジ』のMC時代、自分の著書を宣伝したときに「私もまだ読んでないんです」と言って、共演者の片岡鶴太郎にツッコまれたことは語り草だ。後年、《あれは原稿自体は読んでいたんですよ。製本されたものを初めて本番中に見ましたという意味だったんですけど、伝わるはずもなく》と弁解したが(『週刊文春』2017年2月23日号)、ここでも原稿を「書いた」ではなく「読んでいた」と言っているあたり、隙を感じてしまう。

片岡鶴太郎と(松本伊代のインスタグラムより)

 結婚してからも、彼女のおかげで、ヒロミの焼いたステーキが甘くなってしまうという事件があった。それというのも、ヒロミが調味料用の瓶をいくつか買ってきて、そのうちの一つに塩を入れたあとで、彼女もキッチンでその瓶を見つけて「あ、これ便利」と別の一つにグラニュー糖を入れたものの、それを彼に伝えなかったのが原因だった。

 当の彼女もその晩にはすっかり忘れており、塩ではなくグラニュー糖が使われたステーキを「私はこのくらいの甘さでもいいと思うよ」と言いながら、半分くらい食べたところでようやく思い出して、正直に打ち明けた。しかし、ヒロミは怒って「こんなことが続くんだったら、僕はママと暮らしていく自信がない」と言ったきり、それから3ヵ月は口をきいてくれなかったという。

ヒロミ ©文藝春秋

愚痴のつもりでした話が笑い話に浄化

 それでも毎日頑張って話しかけてくる松本に、ヒロミも《最後のほうはふざけ半分で“口きかない遊び”みたいになってた(笑)》という。もともと彼女は家事がそんなに得意でないだけに、彼としてはこのほかにもイライラさせられることはしょっちゅうらしい。しかし、親友の木梨憲武から「最近、伊代のネタないの?」と訊かれ、愚痴のつもりで話すたび、《「お前んちの奥さん、ほんと面白いな」って、話を聞いたみんながなごんでくれ》、笑い話に浄化されているという(以上、引用は「週刊女性PRIME」2020年12月26日配信)。

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(左から)ヒロミ、松本伊代、長男の小園凌央(小園凌央のインスタグラムより)

 ヒロミのほうも松本と結婚したことで多分に救われているところがある。2004年頃から10年ほど、彼が芸能界での仕事が激減し、遊ぶことに夢中になっていたときも、「いいかげん働きなさいよ」などと言われても不思議ではなかったのに、ママは何も言わなかったと著書で感謝している(ヒロミ『いい訳しない生き方。』ロングセラーズ、2015年)。テレビに復帰できたのも、ある番組から松本に来たオファーでヒロミも一緒に出て妻の話をしてほしいと頼まれたのがきっかけだった。このとき語った彼女の面白エピソードが反響を呼び、再ブレイクの糸口をつかむ。

「第3回ベストエンゲージメント2015」のカップル部門を受賞したヒロミ、松本伊代夫妻 ©時事通信社

 ヒロミが53歳の頃、更年期の症状が表れたときには、先にその症状が出ていた松本の勧めで医師に診てもらい、治療を受けるようになった。

 病気やケガはその後も夫婦につきまとい、松本は2021年、2022年とあいついで圧迫骨折により不自由な生活を余儀なくされた。2度目は番組収録中に骨折し、全治3ヵ月の重傷だったが、ヒロミは介護とともに自宅を徹底してリフォームしてくれたという。そればかりでなく、2023年1月に松本が出演予定だった湯川れい子のバースデー公演にも代理で出演し、会場を盛り上げ、さらにはステージから電話を彼女につなぎ、声での“生出演”も実現させている。