「センチメンタル・ジャーニー」解禁の裏側
湯川作詞の「センチメンタル・ジャーニー」を松本は背伸びしていた20歳前後より、テレビでもライブでも歌わなくなった。しかし、産休しているときに見た音楽番組で、先輩歌手たちが往年のヒット曲を歌っているのを見て楽しませてもらい、自分にも素敵な曲があるのに歌わないのはもったいないし、ファンにも失礼だったと気づいたという(『週刊現代』前掲号)。
同曲の封印解除には、ヒロミの後押しもあったようだ。あるバラエティ番組で、歌の途中で歌詞を間違えたら上から水をかけられるという仕事を依頼されて悩んでいると、彼から「あの歌は宝物じゃん」と勧められたという。「宝物なのに水をかぶるんだよ」と言い返したものの、結局引き受けると、周囲から喜んでもらえたという(『週刊ポスト』2023年5月26日号)。
2021年のデビュー40周年以降、松本が毎年秋に開催している単独コンサートのタイトルも「Journey」である。今年は60歳の節目とあって、これに先立ち3月にも渋谷で「Adagio」と題したコンサートを開催している。近年はデビューが同期の早見優に後輩の森口博子を交えたユニット「キューティー★モリモリ」(前身は早見とやはり同期の堀ちえみによる3人組「キューティー★マミー」)でもコンスタントにライブを行うほか、つい先日、6月14日と15日にはヒロミら東京・八王子出身者がスペシャルアンバサダーを務める「八王子魂 Festival & Carnival 2025」のステージにも立った。
十六から六十へ数字が引っくり返っても、彼女は「センチメンタル・ジャーニー」を歌詞を変えず歌い続ける。思えば、その歌詞中、“16歳の伊代”は何かに誘われながら旅に出る。現実の彼女も、デビュー当初は事務所に、そして結婚後は夫のヒロミに誘われたり後押しされたりしながら、いまなお新たな挑戦を重ねる旅の途上にあるようだ。
*松本伊代「センチメンタル・ジャーニー」 作詞:湯川れい子、作曲:筒美京平

