イスラエルとイランの交戦を巡り、トランプ米大統領は6月21日、イランの核施設3カ所を攻撃したと明らかにした。トランプ大統領は6月19日の声明でイラン攻撃の可否について「2週間以内に決断する」と語ったばかりだった。
ここ数週間トランプの言動は「平和の構築者とは真逆」
ロイター通信によれば、トランプ政権のウィトコフ中東担当特使とイランのアラグチ外相が20日までに数回にわたって電話で協議した。米国とイランによる外交的解決を模索していたとみられる。トランプ氏はSNSに「攻撃は非常に成功し、完了した」「今こそ平和のときだ!」と投稿したが、イランやイスラエルに駐在した元外交官や、元自衛隊幹部たちからは、トランプ氏のここ数週間の行動について「出たとこ任せ」「(トランプ氏が自称する)平和の構築者とは真逆の行動ばかり」など、手厳しい発言が相次ぐ。
トランプ政権はもともと、イランの核開発について外交的な解決を目指していた。15日にはオマーンで6回目の核協議を行う予定だった。日本政府の中東専門家は「トランプの特徴はビジネス的なディールを好む点と、戦争が嫌いだという点。この2つは国際社会もおぼろげながら理解している」と話す。イスラエルがイランに対する攻撃を事前通告した際も、米国は攻撃に難色を示していたという。
イスラエルという勝ち馬に乗ったトランプ
ところが、イスラエルが13日、イランに対する攻撃に踏み切ると、トランプ氏は態度を豹変させた。トランプ氏は攻撃直後こそ、事態を静観する構えをみせていたが、17日になるとSNSに「いわゆる『最高指導者』がどこに隠れているか、我々は正確に把握している。彼を狙うのは簡単だが、その場所では安全だ。少なくともいまのところ我々は彼を排除(殺害!)するつもりはない」と投稿。「無条件降伏!」とも書き込んだ。
イランに駐在した経験がある日本の元外交官は「イスラエルが次々にイラン精鋭部隊のトップや科学者の殺害に成功しているのを目の当たりにして、強気になったのだろう」と語る。
この元外交官によれば、イランには「シャー(パーレビ政権)の時代を懐かしむ人が大勢いる」という。「独自の商社や貿易会社を営み、制裁逃れの焼け太りで儲けているIRGC(イスラム革命防衛隊)への反感もある」(同)。テヘランの街頭でも、イラン人の助手に頼めば、簡単に人々から体制を批判する言葉を聞けたという。第三国の元情報機関員は「今回のイランにおける一連の暗殺は、現地協力者なしでは考えられない。イランは体制に不満を持っている人間が多いから、接近も容易だったのだろう」と話す。
