――胃の中の空気を自分で抜くんですか。

エマ そうです。胃に穴を開けてチューブを挿して、シリンジ(注射器みたいなもの)を使って自分で空気を抜くんですけど、結局、嘔吐物みたいなものしか出てこなくて、全然意味がなかったんです。

 その後も結局診断には至らず、どんどん体調は悪くなり、在宅医療で点滴を入れるようになったら、今度は敗血症になってしまって。

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入退院を繰り返していた頃のエマさん(写真=本人提供)

「死神が見えましたね」敗血症で生死の境をさまよい…

――敗血症って、すごく危ないですよね。

エマ 致死率20%前後ともいわれます。在宅での点滴医療から数か月が過ぎた頃、留置していた点滴の針が原因で感染症が起きたんです。もう体がまったく動かなくて、目も開けてられなくって。

 その時はさすがに、死神が見えましたね。

――死神ですか。

エマ 入院先のベッドで寝ている自分を、上から見下ろしました。幽体離脱みたいな感じですよね。で、病室の扉の近くに死神的なものがいるのを感じて。あの扉の向こうに行ったら自分は絶対に死ぬ、と思いました。

 その時、母もこのままだと私の命が危ないと感じたみたいで、別の病院に転院させてくれてなんとか事なきを得たんですけども。

発症から20年を経て「慢性偽性腸閉塞症(CIPO)」と診断

――敗血症になり、それでも根本の病気はわからないまま、すでに20年が経っているという状況ですよね。

エマ 最終的にCIPOの診断がついたのが38歳の時だったんですけど、一番シンプルなバリウム検査に似た検査でわかったんですよ。

 

――ありとあらゆる検査を経てもわからなかった病気が、オーソドックスな検査で判明したと。

エマ 在宅で点滴している写真をフェイスブックにあげたら、研修医時代の恩師でもあるがん研有明病院の比企直樹先生(現在北里大学医学部上部消化管外科学教授・北里大学病院副院長)が、「診察をするから来なさい」と言ってくれたんです。

「そもそも、あんな写真をSNSにあげている時点でおかしいよ」とも言われましたが、典型的な医療難民になっていたんです。