殺害する前は、警察官に「下半身まるだしの姿」を見られたことも…。熟年不倫の末に、殺人犯と被害者の関係になってしまった男女。2人にいったい何があったのか? 平成8年に起きた事件の顛末を、事件サイト『事件備忘録』を運営する事件備忘録@中の人の新刊『好きだったあなた 殺すしかなかった私』(鉄人社)より一部抜粋してお届けする。なおプライバシー保護の観点から本稿の登場人物はすべて仮名である。(全3回の1回目/続きを読む)
◆◆◆
熟年不倫カップル殺人事件
「もういい加減にしてよ!」
真夜中のビルの駐車場に、女の声が響いた。その女を追うように、もう一つの人影がふらふらと近寄っていく。
酒臭い息が迫る。あぁもう嫌だ、なんでこんな目に遭わなければならないの。女は身に着けていたスカーフを手に取ると、そのまま男の首に巻き付け、そのまま力いっぱい締め上げた。
平成8年4月9日午前6時ごろ、東京都江東区大島のマンション駐車場で、初老の男性が倒れているのを通行人が発見、119番通報した。男性はすでに死亡しており、警察では事故、病死、そして殺人も視野に入れて捜査を始めた。
死亡していたのは、近くの米穀店経営・宇喜田泰利さん(仮名/当時66歳)。その日は知人女性と馴染みの居酒屋へ出かけており、その後、帰宅していなかった。
警察ではその知人女性が何か事情を知っているとみて捜査をしていたところ、同日午後6時ごろ、その女性が夫に連れられて城東署に出頭してきた。そこで、宇喜田さん殺害を自供したため、殺人容疑で逮捕となった。
逮捕されたのは千葉県浦安市在住の主婦・稲川花代(仮名/当時59歳)。花代は夫のいる身でありながら、宇喜田さんとは10年以上の不倫関係にあったという。この夜、花代は宇喜田さんに別れ話を持ち掛けたところ、宇喜田さんがそれに応じないばかりか、すべてを夫にばらしてやるなどと脅したうえで、肉体関係を強要してきたことから激高、咄嗟に手に取ったスカーフで宇喜田さんの首を絞めた、とのことだった。
しかしその後の裁判では一転、宇喜田さんは突然死したのであり、花代は殺していないと主張し始めた。
熟年不倫の結末とは──。
