ズレていく家族観

 夫は子どもとよく遊んでくれた。家にいることより外に遊びに出ることが好きで、休日の度に車で、夏は海やキャンプ、冬は雪遊びやスキーなどに出かけた。

「夫は家事は一切しませんが、私も『これをしてほしい』などと頼んだことはなかったと思います。夫は毎週遊びに行きたがる人で、私は計画的な旅行は好きですが、思いつきで出かけるのは嫌でした。基本的に節約・貯金の考えで、日々の暮らしを丁寧にしたいんです。子どもの教育に関しても、夫は『子ども自身が好きなことを見つけて進めば良い』という考えで、私は『お勉強や習い事をさせて可能性を広げて、導いてあげたい』『大学は当然。理系なら院まで』という考え。全くといっていいほど考え方が合いませんでしたが、わかったのは結婚してからです。結婚前は、私が無意識に夫に合わせていたのかもしれません」

 結婚して子どもができると、お金の使い方や子どもの教育観などの違いから、喧嘩が絶えなくなった。

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※画像はイメージ ©akikoイメージマート

「息子が5歳になった時、誕生日プレゼントに夫が2万円のラジコンを買ってきた時や、車を買い換えると言って、一番高いグレードのものを選んだ時は、大ゲンカになりました」

 しかし一方で、佐伯さん自身も極端だった。夫のお小遣いを、家で飲むビール、飲み会代は別で2万円とし、2人の子どもたちの習い事に、1ヶ月10万円使っていた頃もあったという。

「子どもたちが小学校から高校くらいまでの頃の私は、『勉強しなさい!』『早くやりなさい!』が口癖でした。やることをやらないと、ついイライラして怒ってしまう。心のどこかで『ちゃんとしてほしい』『できて当たり前』と思っていたんだと思います。でも、それって私の理想を子どもに押しつけていただけでした」

 それは夫に対しても同じだった。「なんで○○してくれないの?」「どうして私ばっかり?」と不満をぶつけてばかり。いつしか夫と会話する時は、普通にしていても、まるで責めているようなキツイ口調になっていた。