本気の不倫
ところが、夫婦関係は悪化するばかりで、みるみる家庭内別居状態に陥っていった。
「夫は『どうしてそう思うのか?』『なぜこうなったのか?』という私の質問に対して、自分の考えを言葉にできる人ではなかったのです。私の言葉が全て文句に聞こえるようで『ごめん、俺が悪かった』と簡単に謝ることや、バレるような嘘をつくことが頻繁に起こり、『黙ることでその場を収めようとした』とも言われました」
子どもたちの前でケンカになると、子どもたちは「ケンカしないで」と言って間に入った。
そして佐伯さんが夫の不倫を知った時から約半年後。
夫が「残業がある」と言うので、子どもたちを寝かせた後、夜食を届けるために22時頃に工場に行くと、不倫相手の女性といっしょにバイクの整備をしているのを目撃。
後日、佐伯さんは夫のスマホから女性の電話番号を控え、自分から連絡し、2人で会う約束をした。
相手の女性は、佐伯さんの顔を見るなり頭を下げた。
「ごめんなさい。初めは既婚者だと知らなかったんです。素敵な人だったので、好きになってしまいました。家庭を壊すつもりはありません。本当に別れます。すみませんでした」
その日の夜、帰宅した夫も頭を垂れた。
「彼女から聞いた。すまない。もう本当に次こそ別れる」
しかし、佐伯さんはこう語る。
「……と言っていましたが、約1ヶ月後にはまたメールのやり取りが始まるんですよね……。無断外泊はなくなりましたが『仕事』と言っては会っているような感じで、やはり2人は離れないんです……」
さらにそれから1年ほど経った頃、夫が出かけるときに使っているデジタルカメラを見たところ、案の定不倫相手が写っている写真の日付が最近のものだった。
佐伯さんが問いただすと、ついに夫は開き直った。
「浮気ではなく本気だ。もう運命の人じゃないかと思っている」
一瞬絶句した佐伯さんだったが、すぐに我に返って訊ねる。
「じゃあ私たちはどうなるの?」
「子どもが可哀想だから離婚はしない。彼女も離婚は望んでいない」
そう夫は平然と答え、隔週で“家族の時間”と“彼女の時間”を作るようになった。
2013年。夫の工場の経営悪化や夫との関係悪化などの不安要素から、佐伯さんは日勤常勤の看護師として復帰することを決めた。
