大谷翔平ら日本人メジャーリーガーの活躍がテレビのニュースを埋め尽くす一方、インターネットやSNSの世界では「野球部はクソ」という感覚が加速しているといいます。この「ねじれ」はいかにして生まれたのでしょうか?

 もともと本好き、映画好きの〈文化系〉ながら中高大で〈体育会系〉の経験を重ねた中野慧さんによる話題の著書『文化系のための野球入門 「野球部はクソ」を解剖する』(光文社)から一部を抜粋します。(全3回の3回目/もっと読む

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亀梨は2010年から「ホームランを打つ」目標を掲げた

 ジャニーズ(現STARTO ENTERTAINMENT)のKAT‐TUNに所属していた亀梨和也は、キャスターを務める日本テレビ系列のスポーツニュース番組『Going! Sports&News』のなかで、2010年8月から「ホームランプロジェクト」「豪速球プロジェクト」という企画を始めた。

©文藝春秋

 そもそもジャニーズと野球の関係は深いものがある。ジャニーズは、終戦後に進駐軍が代々木に宿舎として持っていたワシントンハイツで、日系2世であるジャニー喜多川が近所の少年たちに野球を教えるようになったことから始まっている。その後、少年たちと喜多川が『ウエスト・サイド物語』のミュージカルを観たことをきっかけに、歌って踊るエンターテイメントを志したことが、のちのジャニーズ事務所設立へつながっていった。そのためジャニーズは「ジャニーズ野球大会」を東京ドームで開催するなどして、長らく野球とのつながりを保ってきた。

 亀梨も以前からジャニーズ野球大会で投手として登板していたが、そもそも小学生時には野球をやっていて世界大会にも出場経験があり、中学ではシニアリーグでプレーしていた。ジャニーズの活動に専念するため野球は途中でやめてしまったが、スポーツニュース番組のキャスターになったことをきっかけに、亀梨自身が「ホームランを打つ」ことを目標に掲げ、数々の現役プロ野球選手のもとに取材に訪れ、バッティングの上達を手伝ってもらうという企画を行った。この企画はピッチングにも発展し、やがて亀梨はバッティングやピッチングのやり方についてさまざまなプロ野球選手に取材していく。