出産や育児による、肌の変化を、「きちんとケアしていなかった私がいけない。恥ずかしいことなのだ」と話すお母さんも…。こうした圧力に悩まないためにはどうすればいい? 小児精神科医でハーバード大学准教授の内田舞氏の新刊『小児精神科医で3児の母が伝える 子育てで悩んだ時に親が大切にしたいこと』(日経BP)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/最初から読む

写真はイメージ ©getty

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母親に向けられる「容姿」に関するプレッシャー

 出産した女性が社会から受ける、「容姿」に対するプレッシャーも、ガスライティングやマムシェイミングの一つだといえます。

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 私は妊娠・出産を経て、シミやそばかすが以前より濃くなりましたが、世間では「美白」「アンチエージング」などの言葉をよく見聞きしますし、シミやそばかすについても「良くないものだ」とするメッセージであふれています。

 妊娠を経ると、色素が少し濃くなるのは生物学的にも自然なことです。また、普段から子どもに支度をさせて大急ぎで出掛けることも多いので、丁寧に日焼け止めを塗ったりできないことも多いです。子どもたちを産み、育てていく中で自然に起きる肌の変化でさえ、恥ずべきことであるかのように思わされるのは理不尽に感じますが、それでもこうした肌の変化を、「きちんとケアしていなかった私がいけない。恥ずかしいことなのだ」と話すお母さんに会うこともしょっちゅうあります。

 ほかにも、妊娠出産直後に、そのままの体形でいることよりも、いち早く痩せて元の体形に戻すことが望ましいという認識はまだ根強く、私も、身体的、精神的な不調に悩まされている産後の不安定な時期に、出産後の体形について悩んでしまったことがあります。

 一人の人間を送り出したばかりの自然な変化なのに、なぜネガティブな感情を抱かなくてはいけないのでしょうか。ましてや「恥ずべきこと」だと思う理由なんてないはずです。