第3段階:氷は「白い氷」か「黒い氷」に絞り込めたが…

 しかし、冷たく〆たそばの上にシャリシャリ氷をのせるだけだと、つまり、どんぶりに「冷たく〆たそば+シャリシャリ黒い氷or白い氷」だけでは、出汁のうま味や塩味をしっかりと感じないという問題が起きてしまったのである。つまりかき氷の下の構造をどうするか。

 そこでどんぶりのそこに海老味噌をひいて「冷たく〆たそば+シャリシャリ白い氷」を組み合わせたが味がバラバラ。いろいろ試したのだがどうもしっくりこなくて、石田さんは大きな壁にぶち当たっているというのが訪問時での状況だった。

第4段階:5つの味を提案

 石田さんの深い悩みをじっくり聞いて、私はシンプルに立ち返る作戦を提案した。つまり、従来の冷しそばのように、まず冷たいつゆをはって、それに冷たいそばと白い氷をのせる構造を提案した。その組み合わせは次の5つ。

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[1]黒い松汁+そば(更科)+白い氷
[2]白い松汁+そば(更科)+白い氷
[3]白黒ハーフ+そば(更科)+白い氷
[4]白い松汁+そば(更科)+黒い氷
[5]黒い松汁+そば(更科)+黒い氷

 まず、[1]のタイプをすぐに石田さんが試作した。すぐに氷はできる。

[1]の黒い松汁+そば(更科)+白い氷

 しかし、これは黒い松汁の甘さが強くでて、白い松汁氷の良さが消えてしまう。NGである。試作品なのでトッピング盛り付けはない。

 次に[2]のタイプを試作。つゆも白いのがわかる。

[2]の白い松汁+そば(更科)+白い氷

 これは逆につゆと氷の味が同化して、インパクトに欠けてしまう。またNGだ。石田さんがため息をついて少し落ち込む。いや、まだ次がある。

 次に[3]のタイプを試作。分かりにくいがつゆの色が中間位である。石田さんが食べると急に笑顔が広がった。

「これだ、これがうまい」

[3]の白黒ハーフ+そば(更科)+白い氷

 私も食べてみる。白黒ハーフつゆの主張と白い氷のバランスが絶妙だ。台はこの[3]に決定だ。

 そのあと氷が溶けても、出汁つゆ氷なのでつゆは全く薄まらない。試しに梅干しをのせて食べたときのつゆの色が琥珀色でなかなかよい。

氷が溶けてもつゆは薄まることなくずっと冷たくうまい

 次に[4]の白い松汁+そば(更科)+黒い氷を作ってみた。このタイプはもっとも松石らしい味で、全体的に黒く(つゆ色)なる。これも悪くない。溶けた後のつゆの味が抜群にうまい。しかも冷たいまま。

[4]の白い松汁+そば(更科)+黒い氷。全体的に(つゆ色が)黒くなる

 最後に、[5]のタイプ、黒い松汁に黒い氷を作ったが、これは「ちょっと面白みに欠ける」ということで却下。結局、[3]の白黒ハーフ+そば(更科)+白い氷と[4]白い松汁+そば(更科)+黒い氷で進めることとした。